近年、草刈機やチェーンソーなどバッテリーで動く農機具が多くなってきています。
今までのエンジン式の様に燃料を用意・管理する手間が無く、手軽に使用する事が出来ます。
しかしエンジン式に比べてパワーなど、実際の作業に耐えうる性能があるのか、気になるところです。
今回は充電式農機具の中から、マキタ製の充電式チェーンソー ”MUC353D” の装備している機能や使い方、使用感等についてレビューしていきます。
マキタ充電式(18v+18v➩36v)チェーンソー・MUC353D
マキタ製充電式(18v+18v➩36v)チェーンソー ”MUC353D” は、18Vのリチウムイオンバッテリーを2個装着(上方から本体の左右に取り付けし、合計36vのパワーになる)し、バッテリーのみで動くチェーンソーです。
MUC353Dは、使用するソーチェンの形式によってボディーの色が異なります。
使用するチェーン形式が ”25AP-76E”(ソーチェンの刃数が多くスムーズな切れ味)の場合はボディー色が 赤 、”91PX-52E”(刃数が25AP-76Eより少なく、キックバックが少ない)の場合がボディー色が 青 となります。
※MUC353Dのボディー色・チェーン形式と、バッテリ・充電器が付属or別売りによる品番の違いは次の通りです。
ボディー色 | 赤 | 青 |
チェーン形式 | 25AP-76E | 91PX-52E |
バッテリ・充電器付属 | MUC353DGFR | MUC353DPG2 |
本体のみ(バッテリ・充電器別売り) | MUC353DZFR | MUC353DZ |
今回は、ボディー色が青(チェーン形式・91PX-52E)のMUC353Dについてレビューしていきます。
”MUC5353DZ” は、チェーンソー本体・ガイドバー・ソーチェン・チェーンオイル・チェーンカバーが標準で付属しています。
”MUC353DPG2” には、更にバッテリ(2個・BL1860B・容量6.0ah)・充電器(DC18RD)が付属します。
MUC353Dの各部名称とスペック
MUC353Dのスペック概要(マキタカタログ参照)
- ガイドバー長さ 350mm
- チェーンスピード 1200m/毎分
- 重量(バッテリ含む) 5.2kg
- フル充電時の作業量 杉丸太・径200mm・約54本 杉角材・50mm・約650本
MUC353Dの使い方
ソーチェンの取付・交換
ソーチェンの取付・交換は、誤作動による事故を防止する為、必ず本体からバッテリを取り外してから行います。
ソーチェンを取り付けるには、本体右側の ”スプロケットカバー” を外します。
レバーの凹部を押し込みながら起こし(ロックするまで)、スプロケットカバーが外れるまで反時計回りに回していきます。
ガイドバーの溝にソーチェンをはめていき、端部をスプロケットにかけ、ガイドバーの長穴が本体のボルト・出っ張りにはまる様に設置します。
ソーチェンは、上側が前方方向へ回転するので、刃の向きが回転方向に向くように取り付けます。(本体にも刃の向きが印されています)
スプロケットカバー表側のツマミをマイナス方向へ回し、裏側のアジャストピンを後方へずらしておきます。
ガイドバーの小穴にアジャストピンを差し込み、レバーを時計回りに回して締め込んだら、ソーチェンの取付完了です。
ソーチェンの張り調節
ソーチェンの張り調整を行う際にも、取付・交換時同様、本体からバッテリを外しておきます。
ソーチェンは適切な張りにしておかないと、作業中にソーチェンがガイドバーから外れ事故につながる可能性があるので、作業前・作業中絶えず適切な張りにしておく必要があります。
スプロケットカバーのレバーを反時計回りに軽く緩む程度に回して、ガイドバーの固定を緩めておきます。
スプロケットカバーのツマミは、前方(+方向)に回すとガイドバーが前方に移動し、後方(-方向)に回すとガイドバーが後方に移動します。
ガイドバーが前方に移動するとソーチェンが張られ、ガイドバーが後方に移動すると緩みます。
ガイドバーの先端を軽く持ち上げた状態でツマミを回してガイドバーの位置を前後させ、ガイドバーとソーチェン底面が軽く触れる様に張り調整したら、レバーを時計回りに回してしっかり締め付け、ガイドバーを固定します。
チェーンオイル
チェーンオイルは、本体左横のオイルタンクキャップを外し、オイル給油口から補充(容量約200ml)します。
オイルタンク部は半透明になっており、中のオイルが透けて見える為、残量の確認が容易に出来て非常に便利です。
チェーンオイルはチェーンソーを動かすと自動で吐出します。
作業前に試運転をし、ガイドバーの先端からチェーンオイルが吐出しているかどうか確認します。
吐出量が少ない場合は、オイル吐出口の清掃もしくは、吐出量調節ネジを回して吐出量を調整します。
吐出量調整ネジ(マイナスネジ)は本体裏面にあり、塗布量を三段階に調整する事が出来ます。
※チェーンオイルが吐出されずにチェーンソーを使用すると、ガイドバー・ソーチェンの焼き付きにつながるので、チェーンオイルの残量及び吐出量の確認は必ず行います。
スイッチ操作
電源スイッチを長押しすると、電源が入ります。(電源ランプ点灯)
電源が入った状態で、ロックオフレバーを握りながら引金を引くと、チェーンソーが動作します。
(ロックオフレバーを握らないと引金を引くことは出来ません。)
電源を入れてから、1分間チェーンソーを操作しないと自動的に電源が切れる仕様になっています。
電源ランプは誤った操作(キックバックブレーキ作動中に引金を引くなど)時に点滅して通知するようになっています。
チェックボタンを押すと、バッテリ表示ランプが点灯し、バッテリ残量を確認する事が出来ます。
キックバックブレーキ・チェーンキャッチャー
ガイドバーの先端部が木材や障害物に当たって、作業者の方へ跳ね上げられる事を、”キックバック” と呼びます。
キックバックを起こさない様に作業する事が必要ですが、キックバックが発生した場合危険を回避するために フロントハンドガードによって動作する ”キックバックブレーキ” 機能が装備されています。
キックバックブレーキは、フロントガードを前方に倒すと作動する仕組みになっています。
キックバックによってガイドバーが跳ね返ると、フロントハンドルを持っている手の甲がフロントハンドガードに当たって(前方に倒れる)ブレーキが作動します。
キックバックブレーキが作動すると瞬時にソーチェンの回転が停止する為、キックバックによる危険を少なくする事が出来ます。
ブレーキを解除するには、フロントハンドガードを手前に引き戻します。
切断作業中、ソーチェンが外れたり切れたりした場合、高速回転しているソーチェンが作業者の方へ飛び大けがにつながります。
装備されている ”チェーンキャッチャー” は、ソーチェンが外れたり切れたりした場合にソーチェンが引っ掛かる仕組みになっており、事故を防ぐ役割があります。
作業前には必ずチェーンキャッチャーの点検をしておき、摩耗や変形している場合は交換してから作業に入る様にします。
保護機能
マキタ製の充電式チェーンソーには、切断作業中モーターに負荷がかかり過ぎたり、本体・バッテリが高温になると、自動停止する機能があります。
そのような場合は一旦切断作業を中止し、過負荷の原因を取り除くor本機・バッテリを冷ますと、保護機能が解除され使用できるようになります。
MUC353Dの使用感
実際にナラの生木の丸太(直径約200mm)を木目に対して垂直方向へ切断してみます。
エンジン式チェーンソーと違い、始動は電源スイッチを長押しするだけですぐに切断作業に入れます。
新品のソーチェンを使用していることもありますが、本体の自重でモーターが停止する事なくスムーズに切断する事が出来ます。
次にナラの生木の丸太(直径約250mm)を木目に対して平行方向へ割る様に切断してみます。
木目方向への切断はソーチェンの食いつきが悪くなる為、本体の自重だけでなく切断方向へ押し込む力が必要になり、モーターへの負荷が大きくなります。
その為、切断途中に保護機能が働き、何度かモーターが停止してしまいます。
そのたび電源ボタンを切り入れしながら、切断を完了しました。
充電式チェーンソーのメリット・デメリット(エンジン式比較)
実際に充電式チェーンソーを使用してみて感じたメリット・デメリットをエンジン式チェーンソーとの比較を交えながら説明します。
充電式チェーンソーのメリット
充電式チェーンソーの作業時のモーター音とエンジン式チェーンソーのエンジン音を比較すると、充電式のほうが圧倒的に音が静かです。
エンジン式の場合は、かなり遠くで作業していてもエンジン音はひびき渡りますが、充電式の場合はモーター音の為住宅街での使用(作業量による)も可能の様に感じます。
エンジン式は切断作業の合間のアイドリング運転をすることが多く、その間もエンジン音が出ますが、充電式の場合切断中のみモーター音が発生する為、最小限の騒音にとどめる事が出来ます。
充電式チェーンソーは、バッテリーを装着するだけで可動する手軽さが大きなメリットになります。
エンジン式の場合、燃料を用意・保管する必要があります。
燃料は、混合ガソリン(ガソリンとオイルを混合したもの)を使用する為、ガソリンの調達(混合ガソリンはホームセンターで購入可能)が必要になりますし、可燃物の為保管もきちんとしなければなりません。
充電式はバッテリーの充電のみで、しかもほかの電動工具のバッテリーと共有できるようになっているので手軽に使用出来ます。
(電源コードをコンセントにつないで使用する ”電動式チェーンソー” もありますが、充電式チェーンソーのほうが取り回しがしやすいです)
充電式・エンジン式共に、使用後の清掃(ガイドバー・スプロケットカバー等)などのメンテナンスは必要です。
しかし、エンジン式の場合、構造上メンテナンス箇所が多くあります。
エンジンに燃料を送り込む部分(キャブレター等)・点火プラグ・エアフィルター等のメンテナンスが必要で、不十分であるといざ使用する際になってエンジンの不調に見舞われ、作業が出来なくなる場合も出てきます。
充電式の場合はエンジン式特有のメンテナンスが不要で、管理が非常にしやすくなっています。
充電式チェーンソーのデメリット
充電式チェーンソーには、高負荷がかかるとモーターが自動停止する ”保護機能” が備わっています。
エンジン式を使用した場合では何ともない切断作業でも、保護機能によって頻繁にモーターが停止してしまいがちです。
モーターやバッテリーの故障を避ける為の機能ですが、作業効率が悪くなり、高負荷の切断作業が出来にくくなるので、エンジン式に比べパワー不足を感じます。
高負荷になる作業には、引金を緩める・引くを繰り返し、加減しながら切断作業を行う必要があります。
まとめ
今回は、マキタ製の充電式チェーンソー ”MUC353D” の装備している機能や使い方、使用感等についてレビューしました。
実際に使用してみましたが、保護機能による作業効率の悪さはありますが、思いのほか切断能力や機能などがエンジン式チェーンソーに近く感じました。
通常のエンジン式チェーンソーと同様の安全機能が備わっており、電源スイッチを入れるだけですぐ切断作業が出来る手軽さ、作業時の騒音の小ささ、メンテナンスのしやすさは、大きなポイントです。
ぜひ参考にしてみてくださいね。