前工程の地縄張り・水盛り・遣り方で基準となる水糸が張れたら、その水糸に合わせて基礎を作っていきます。
基礎は、ウッドデッキの荷重を受ける基礎石とその下の地盤の部分になります。
基礎をしっかりと作らないと、完成後のウッドデッキの傾きなどに影響するので、重要な作業工程です。
今回はウッドデッキで一般的に用いられる独立基礎の作り方を説明していきます。
ウッドデッキの基礎
ウッドデッキの基礎は “独立基礎” と言う方法が用いられます。
独立基礎は、柱(ウッドデッキでは束柱(つかばしら)と呼ばれる)ごとに基礎石を置いて、それぞれの基礎石で個別に柱(束柱)を支える(荷重を受ける)構造です。
ウッドデッキは、風雨にさらされることは勿論ですが、地面からの湿気が原因で傷みが進んでしまう場合が多いです。
ウッドデッキを長持ちさせるには床下の通気が大変重要で、通気が良い独立基礎が用いられる要因の一つです。
独立基礎は比較的作り易く、DIY向きでもあります。
家などの建築の基礎は、ベタ基礎や布基礎が用いられ、柱と柱の間をつなぐ壁の下全体にコンクリートで設置し、建物と基礎の間にパッキンを挟み込み床下の通気を可能にしています。
基礎石の種類
ウッドデッキの柱(束柱)は地面に設置された基礎石の上に置かれて支えられます。(束柱が直接地面にふれ腐るのを防ぎ、しっかりと支える為)
今回のウッドデッキには束石(つかいし)と呼ばれるコンクリート製の基礎石と、コンクリートピンコロと呼ばれる四角形の基礎石を使用します。
束石には羽子板が付いている物があり、束柱をビス止め・ボルト締めして束石に固定する事が出来ます。
基礎石には色々な種類・代用品があります。
普通の束石に加え2×4用の束石や、コンクリート平板・コンクリートブロックも基礎石として使用する場合があります。
束石を使用した独立基礎の作り方
束石の配置
ウッドデッキの外周部に束石を設置していきます。
束石同士の間隔は通常900mm程度にします。(使用する根太の太さにより間隔は前後します。今回はウッドデッキの床下の一部に点検口がある為、その箇所の束石は間隔を変え、ずらして設置します。)
外周部の束石を設置する順番は、四隅に羽子板付束石を配置した後、間に通常の束石(羽子板無し)を等間隔に設置します。
ウッドデッキ外周部は束石を設置しますが、内側部分にはコンクリートピンコロを基礎石として使用します。
コンクリートピンコロは、ウッドデッキの外周部の木部(根太・根太受け)が組み上がった後、根太・根太受けに水糸を張り、基準として設置します。
コンクリートピンコロの設置方法は、後工程 ウッドデッキの作り方。土台の構造(束柱・根太)と作り方とは? で解説します。
基礎構造
独立基礎の構造は、地面に穴を掘り、砂利(砕石)・コンクリートの順に入れ、その上に束石を据え置くのが一般的です。
穴は150mm~200mm程度掘り、砂利・コンクリートはそれぞれ50mm~100mm程度の厚みにします。
穴の深さ・砂利の厚みを確認するには、T字形の定規を自作しておきます。
(今回は、30mm×40mmの角材と1×4材を組み合わせています。)
定規の基準面を地面(地盤面)につけ、前工程 ウッドデッキの作り方。地縄張り・水盛り・遣り方のやり方とは? で張った水糸の位置に印をつけます。(地盤面のことをGL=グランドラインと呼びます。建物を建築する場合では高さの基準となるため非常に重要です。)
地盤面(GL)の印を基準に、所定の穴の深さ・砂利の厚みの寸法を定規に印します。
自作定規を用意する事で、作業中深さをメジャーで確認する手間が省け、作業効率が良くなります。
基礎製作工程
穴掘り・突き固め
束石の下に、砂利・コンクリートを入れる穴を掘っていきます。
束石を水糸に合わせて仮置きし、束石から50mm程度離れた周囲(掘る範囲)の地面に印をつけます。
穴掘りは普通のスコップやシャベルでも可能ですが、縦穴掘り複式シャベル(通称・穴掘りシャベル)があると便利です。
縦穴掘り複式シャベルの刃先は、2枚の刃が向かい合う様になっており、ハンドル部を左右に開くと閉じる仕組みになっています。
使用方法は、まず2枚の刃が開いた状態で、穴を掘る場所に突き刺します。(地面が硬い場合は何度か突き刺しながら土をほぐします。)
突き刺した状態でハンドルを左右に開くと間の土が刃と刃に挟まれ、そのままシャベルを持ち上げると、穴が掘れる仕組みになっています。
杭など支柱を立てる縦穴を掘る為のシャベルですが、狭い場所での穴掘りには普通のシャベルより作業しやすく便利です。
縦穴掘り複式シャベルを突き刺し、少しずつ穴を掘っていきます。
時々自作定規の基準面を穴の底にあて、水糸の位置で深さを確認しながら掘り進めます。
穴を掘り終わった後に穴の底を突き固めるので、所定の深さより多少浅めにしておきます。
穴を掘り終わったら、穴の底を転圧(地盤を突き固める)します。
転圧にはタンパーやタコと呼ばれる専用の道具や、自作した物を使用するのが一般ですが、今回はグラスファイバー柄の大ハンマーを代用品として使用します。(木製柄の大ハンマーは柄の先端部分が傷むのでおススメしません。)
大ハンマーの頭部分は硬く重さもあり、狭い穴の底を転圧するのに丁度いい大きさです。
大ハンマーの頭の打撃面ではなく、天辺部分を使って穴底全体を転圧したら、自作定規で深さを確認します。
転圧が不十分だとウッドデッキの重さで基礎が傾く原因になるのでしっかり突き固めておきます。
砂利入れ・突き固め
砂利を適量穴へ入れ、突き固めます。
自作定規の砂利天端の印と水糸が一致する様に、砂利の量を調節し突き固めます。
コンクリートを流し込み、束石を設置
砂利まで突き固めたら、コンクリートを入れます。
コンクリートはセメント・砂・砂利を混ぜ合わせて作りますが、出来上がりのコンクリート量が分かりにくく、材料が余ってしまう事が多いです。
特にセメントは開封してしまうと保存が難しく(湿気に弱い)硬化して使えなくなることがあります。
そこで今回は、出来上がりの量が分かりやすい “インスタントコンクリート” (セメント・砂・砂利が配合してあり水を加えるだけでコンクリートが出来る)を使用します。
コンクリートは “トロ舟” と呼ばれるプラスチックのケースの中で角スコップ(一般的なサイズより一回り小さい物)を使用し水を加え混ぜ合わせます。
コンクリートに水を入れて混ぜ合わせる前に、束石の準備をしておきます。
今回のウッドデッキは束柱の外側面が外周の基準となっていて、水糸と一致します。
そのため、束石の上面に束柱が乗る位置を墨付けしておきます。
コンクリートは硬化する為に水分が必要です。
束石を乾いた状態でコンクリートの上に据え置くと、束石がコンクリート内の水分を吸収してしまい、硬化不良を起こしてしまいます。
コンクリートの硬化不良を防ぐため、束石を水に浸け吸水させておきます。
インスタントコンクリートに水を加え、混ぜ合わせます。
コンクリートの仕上がりを少し固めにしておきたいので、状態を見ながら少しずつ水を加え練り上げます。
練りあがったコンクリートは一度に多く入れると馴染みづらく空洞が出来やすいので、少量ずつ穴に入れ、スコップの刃先や棒で突きながら広げ馴染ませていきます。
コンクリートの天端は地盤面(GL)より少し下げた位置にしておきます。
束石の墨線と水糸がなるべく重なる位置に(目見当)、束石を仮置きします。
水平器を使用し、束石上面の十字方向の水平を確認・微調整します。
束石上面を一旦水平に設置したら、束柱の墨線の3つの角にさしがねをあて、墨線と水糸の位置を確認します。
束柱の墨線が水糸の真下に来るように、束石を前後左右に動かし調整します。
束石を動かすと水平もずれてしまうので、束石を動かす・水平を調整・さしがねで水糸の真下にあるか確認・の作業を繰り返して、水糸の真下に束石(上面が水平)を設置します。
コンクリートがある程度固まり束石が動かなくなったら、束石の回りにコンクリートをかぶせて(なるべく地盤面より上に出ないようにする)ならしたら束石の設置完了です。
ウッドデッキ四隅の羽子板付束石を、水糸の真下(束石の上面は水平に)へ正確に設置します。
ウッドデッキの水平は、それぞれの束柱の長さを調整して出すので、束石同士の高さは同じにする(同じ水平面に束石の上面を合わせる)必要はありません。
四隅の羽子板付束石を設置出来たら、間に羽子板無し束石を900mm程度の間隔で設置します。
束石には、水糸の真下にくる墨線(束柱の側面)と中心線を引いておきます。
束石の墨線を水糸の真下に来るようにし、四隅の束石からメージャーで間隔を測って仮置きしたら、掘る範囲を地面に印しておきます。
四隅の羽子板付束石の設置方法と同じく、穴を掘り突き固め、そこへ砂利を入れ突き固めます。
コンクリートを馴染ませながら入れ、束石を水糸の真下に来るように仮置きします。
水平器で束石の水平を確認・調整します。
束石が水平の状態で、束石の墨線の端にさしがねをあて、水糸と墨線の位置を確認します。
ずれているようであれば束石を動かし調整します。
四隅の束石からの間隔を、束石に印した中心線を目安に測ります。
所定の間隔になる様、束石を動かし調整します。
一連の作業(さしがねで水糸と束石の位置を確認・束石を動かし調整・水平を確認・束石の間隔を計測・束石を動かし調整・水平を確認)を何度か繰り返し、水糸の真下に束石を設置します。
今回のウッドデッキには基礎石の設置場所がコンクリートの箇所があります。
設置前にコンクリートに散水しておきます。
設置場所に束石を仮置きし、チョークで印をつけます。
印内にモルタル(セメントに砂を混ぜ、水を加えて混ぜ合わせたもの)を敷きます。
モルタルに関しては失敗しないモルタル鉢の作り方。の記事を参照してください。
束石をモルタルの上に仮置きしたら、他の束石と同様に水平と位置を確認・調整し接地します。
ウッドデッキの外周部に束石を設置し終わりました。
まとめ
今回は束石を使用したウッドデッキの独立基礎の作り方について説明しました。
掘り下げた地盤をしっかりと突き固める事と、基準となる水糸の真下へ正確に束石を設置する事が重要なポイントとなります。
とくに四隅の束石は羽子板付という事もあり、高い精度が求められます。
基礎をしっかりと正確に作っておけば、ウッドデッキの出来上がりも自ずと良い物になります。
今回の基礎の作り方を参考にして、慎重に作業してみてくださいね。
次回は束石の上にウッドデッキの骨組みとなる土台(束柱・根太)を組み上げる工程、土台の構造(束柱・根太)と作り方とは?です。