精度の高い木材のカット、作業性の向上は木工DIYでいい物を作る際の重要なポイントになります。
特に部材の角度切断はDIYerにとって悩ましい工程の一つです。
そんな角度切断や直角切断が簡単に綺麗に出来、作業効率のアップ間違いなしの電動工具が “スライドマルノコ” です。
今回は、 “スライドマルノコ” の機能と使い方について説明します。
スライドマルノコとは
スライドマルノコとは、高速回転するノコ刃を押し下げ、手前から奥側へスライドさせながら本体ベース上に固定してある部材を切断する電動工具です。
パワーが強く、直角切断は勿論ですが、角度をつけた切断が簡単に切断面も綺麗に出来ます。
今回はマキタ製のスライドマルノコ(LS1014・刃径260mm)を使用し説明していきます。
スライドマルノコ各部名称
基本操作
ハンドル部のロックオフボタンを押し込みながら、スイッチを握るとノコ刃が回転します。
スイッチを離すと自動的にロックがかかり、スイッチが入らなくなります。
スイッチが入りノコ刃が回転したら、ハンドルを下限まで押し下げます。
押し下げた状態でハンドルを奥へスライドさせていき部材をカットします。
ノコ刃交換
ハンドル部が上がった状態で、ストッパピンを押し込み、固定します。
付属のボックスレンチで六角ボルトを緩め、安全カバーを押し上げノコ刃を締め付けている六角ボルトを露出させます。
シャフトロックを押し込みノコ刃を固定しながら、ノコ刃を締め付けている六角ボルトを時計回りに回して緩めます。
六角ボルトとアウタフランジを外すと、ノコ刃が取り外せます。
ノコ刃の取り付けは逆の要領で行います。
ノコ刃を取り付ける際に注意すべき点はノコ刃の向き(裏表)です。
必ずノコ刃に記されている矢印の方向と本体に記されている矢印の方向を合わせて取り付けてください。
ちなみに矢印の方向がノコ刃の回転方向です。
安全カバーの動作も確認します。
安全カバーはハンドルを下げると開き、上げると閉じノコ刃の露出を防いでくれます。
正常に作動しないと危険ですのでしっかり確認します。
集塵機能
切断作業で発生する粉塵はノコ刃部の下の吸入口から上面の排出口を通って排出されます。
粉塵排出口に付属のダストバッグを取り付け集塵する事が出来ます。
排出口には集塵機を接続する事も出来、より衛生的に作業する事が可能です。
スライド切断
直角切断
1バイ4材を直角に切断します。
ガイドフェンスに材料をしっかり押し付け、たてバイスで固定します。
スイッチを握りノコ刃を下限まで下げたら、奥に向かってスライドさせながら切断していきます。
切断面のキレイな直角切断が簡単に出来ます。
ノコ刃部を手前に引きながら切断をすると、反発力が生じ、手前にノコ刃部が跳ね返ってくる恐れがあります。
かならずノコ刃部を手前いっぱいに引いた位置からフェンス側(奥側)に向かって切断しきるまで(ノコ刃部が突き当たるまで)スライドさせるようにします。
今回使用しているマキタ製のスライドマルノコ(LS1014・刃径260mm)は切断可能な高さが91mmです。
90mm角の角材を一回で切断する事が出来ます。
家具や小物のDIYではそこまでの切断能力は必要ないですが、ウッドデッキやフェンス、小屋など大きな物をDIYする際には90mm角の角材が一回でカット出来ると大変便利です。
90mm角の角材のように切断可能上限に近い部材を切断する際、粉塵吸入口がふさがれた状態でカットすることになります。
十分な集塵が出来ず粉塵が周囲に飛散するので注意してください。
今回使用しているマキタ製のスライドマルノコ(LS1014・刃径260mm)は切断可能幅(直角切断時)が310mmです。
板材もある程度の大きさまでキレイに切断する事が出来ます。
角度切断
ターンベースを回転させて角度切断をします。
グリップを回して緩めロックピンを押し下げるとターンベースを回転させることが出来ます。
ターンベースは直角切断位置を基準に、左方向には47°まで、右方向には57°まで可動します。
ターンベースの回転角度目盛りの下にはくぼみがあり、所定の角度(0°・15°・22.5°・30°・45°)でロックピンがくぼみにはまり簡単で正確な角度設定が出来ます。
任意の角度に設定したら、グリップを締め付けターンベースを固定します。
45°(留め)切断をしていきます。
ターンベースを45°まで回転し固定すると、正確・簡単に45°(留め)の切断が可能になります。
スライドマルノコを使用すると、枠の角に留め加工を施し接合する事が容易に出来ます。
傾斜切断
ノコ刃自体を傾斜させ部材を切断します。
ノコ刃が傾斜する為、切断時サブフェンスとノコ刃が干渉してしまう恐れがあります。
作業前にサブフェンスを左側に回転させ移動させておきます。
刃口板は固定している小ネジを緩めると移動させることが出来ます。
傾斜切断する際にノコ刃と刃口板が干渉しないように左右に広げておきます。
スライドマルノコの背面にあるレバーを緩めると、アーム部ごとノコ刃を左右45°まで傾斜させることが出来ます。
アーム部の付け根に角度目盛りが付いているので、任意の角度に合わせたらレバーを締めアーム部を固定します。
たてバイスで部材を固定します。
切断作業前に “サブフェンス・刃口板・バイス” がノコ刃部分に干渉しないか確認しておきます。
スイッチを入れたら、ノコ刃の傾斜角度が保たれるようにハンドルに力を加えながら、ノコ刃をスライドさせて切断します。
切断が終わったら、その場でスイッチを切りノコ刃の回転が止まってからハンドルを上げます。
ノコ刃が回転したままでハンドルを上げると、切り落とした材料がノコ刃に巻き込まれ飛び散る危険があるので注意してください。
今回使用しているマキタ製のスライドマルノコ(LS1014・刃径260mm)は、左に最大傾斜45°でノコ刃を固定した場合、高さ50mm・幅310mmの木材を切断出来ます。
右に最大傾斜45°でノコ刃を固定した場合、高さ31mm・幅310mmの木材を切断出来ます。
ノコ刃の傾斜角度を大きくしていくと、切断出来る木材の高さが低くなっていくので注意が必要です。
傾斜切断終了後通常の直角切断を行う際には必ずノコ刃の直角を確認します。
付属の三角定規でターンベースとノコ刃が直角になっているかしっかり確認します。
複合切断
ターンベースを回転させる角度切断とノコ刃を傾斜させる傾斜切断を組み合わせた複合切断が出来ます。
ターンベースを任意の角度に回転・固定、ノコ刃を任意の角度に傾斜・固定したら、部材をバイスで固定します。
サブフェンス・刃口板・バイスがノコ刃に干渉しないか確認してから切断作業に入ります。
複雑な複合切断もスライドマルノコなら簡単に出来ます。
その他の切断加工
溝加工
下限位置調整ボルト部分のストッパアームを調整する事により溝加工を行う事が出来ます。
ストッパアームを奥側に回転させ、ツマミネジを回しノコ刃の下限位置を調整します。
アーム部の出っ張りにツマミネジがつっかかりノコ刃がそれ以上下がらない仕組みです。
相欠き継ぎを例に溝加工をしていきます。
部材の厚みの半分の位置に墨付けします。
部材をターンベース上にセットし、ノコ刃の下限位置をツマミネジを回して墨線に合わせます。
ノコ刃の下限位置を上げたことにより、ノコ刃部を奥側に目一杯移動させてもノコ刃が墨線まで切削出来ない部分ができてしまいます。
フェンス側にスペーサーの端材を挟み込んでから溝加工していきます。
溝の幅両端に溝を切削したら、間を1~2mm程度感覚で切削していきます。
深さの均等な溝が簡単に掘れます。
玄能で粗方余分な部分を叩き割って取り除きます。
残った部分をノミでさらって溝加工が完了です。
溝加工が終わった二つの部材をはめ込んで相欠き継ぎの完成です。
長尺材の切断
切断する部材を安定させ保持する為に、付属のホルダ金具・ホルダアッセンブリを使用します。
ただし、長尺材を切断する際は付属品では部材を安定・保持する事が出来ません。
おススメなのが補助ローラーです。
補助ローラーは上部にローラーがあり、つまみを回すと高さを変えることが出来ます。
長尺材を安定させ保持出来るので切断作業を向上させてくれます。
定寸切断
同じ長さの部材を複数切断する際には、セットプレート(別売品)を使用し、255mm以上の長さの定寸切断が可能です。
その他の(ベース内に収まる長さ)短い長さの定寸切断の仕方について説明します。
当て木を取り付けた仮治具を用意します。
仮治具の長さ・Aは、ベースの端からノコ刃の切断位置までの長さより少し長くしておきます。
ベース端に仮治具の当て木を突き当て、仮治具の端を切り落とします。
仮治具の長さ・Aが、ベースの端からノコ刃の切断位置までの長さと同じになりました。
仮治具をひっくり返し、定寸切断する部材の長さを仮治具に墨付け(当て木の反対側)したら、墨線に沿って切り落とします。
切り残した側をひっくり返し、ベース右端に突き当てると、ノコ刃との距離が定寸切断の寸法と同じになり治具の完成です。
治具をセットし(ベースの右端に突き当てる)、定寸切断する材料を治具に突き当て固定します。
材料を固定出来たら治具を少し離します。(ノコ刃と治具の間に切断した部材が挟まれ、飛ぶのを防ぐため。)
「セットした治具に材料を突き当て固定、治具を少し離し切断」の行程を繰り返すことにより定寸切断が可能になります。
連続して定寸切断した部材の長さを比べてみると、同寸に切断出来ている事が分かります。
注意すべき危険な切断
スライドマルノコの基本操作は、“ノコ刃部を手前いっぱいまで引いた状態で下限まで下げ、奥側へ押して切断する” です。
中途半端な場所から押し切りしたり、手前に引きながら切断するとノコ刃の反発が生じ事故につながりますので絶対に基本操作を守ってください。
傾斜切断時特に注意が必要なのが、“切断し終わったらスイッチを切り、ノコ刃が完全に停止してからハンドルを上げる” 事です。
ノコ刃が完全に停止する前にハンドルを上げてしまうと、切り落とした材がノコ刃に巻き込まれ飛散し事故の原因になるので注意してください。
やむを得ず反りを起こしている部材を切断する際には反りの向きに注意します。
ベース面に対してやまなりの反り、もしくはガイドフェンスに対してやまなりの反りの状態でスライド切断すると、マルノコでのキックバックと同じくノコ刃が切断材に挟まれ、反発力が生じ事故につながります。
必ずベース面、ガイドフェンスにやまなりの反りのやまの部分が接する向きで切断します。
まとめ
スライドマルノコの機能と使い方について説明しました。
スライドマルノコを使用する事により切断作業効率が飛躍的に向上するのは勿論ですが、DIYで苦労する角度切断が簡単に綺麗に出来ます。
パワーが強いので危険度が高い電動工具ですが、しっかり使用法を守って作業すれば、大変便利でなくてはならない工具の一つです。
今回使用したスライドマルノコはこちらです。
ぜひ参考にしてみてくださいね。