DIYを始めると、物を接着する場面が多々あります。
いざホームセンターへ行って接着剤を購入しようとすると、様々な種類の接着剤があり、どれを選んだらいいのか悩みますよね。
そこで今回は、DIYで主に使用される接着剤の種類と適切な選び方・使用法について説明します。
酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤
木工用接着剤と言ったら、通称 “ボンド(白ボンド)” と呼ばれている、酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤です。
酢酸ビニル樹脂成分・40~55%と水・60~45%を混ぜ合わせた水性接着剤です。
速乾タイプは通常の物より酢酸ビニル樹脂の割合が多く配合されおり硬化が約2倍速いです。
通常の状態では乳白色ですが、硬化すると無色透明になります。
接着強度は強いですが、接着後に鉋などで切削しても刃を傷めません。
使用法。
接着面には適量塗布し、固定具(クランプ等)で圧着します。
塗布量は部材のどの部分を接着するかで異なります。
特に部材の木口は接着剤の吸い込み量が多いので、塗布量を多めにします。
水性接着剤なので、圧着によってはみ出た接着剤は水で湿らせたウエスで拭き取る事が出来ます。
はみ出た接着剤を拭き残してしまうと、浸透系塗料(オイル塗料・ステイン塗料など)を使用し塗装する場合、拭き残し部分に塗料が染みこまずに跡が残ってしまいます。
手早く拭き取るのは勿論ですが、拭き残し無いよう丁寧に作業する事が大切です。
隅の部分などは拭き取りにくいので、スクレーパーなどを使用してしっかりと拭き取ります。
圧着時間は様々な要因(室温・材料の種類など)に左右されますが、一般的に気温20℃の場合2~3時間程度の圧着時間をとります。
圧着後、12時間以上動かさずに放置しておくことでしっかり接着する事が出来ます。
注意点。
酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤は凍結してしまうと使えなくなってしまいます。
保管は冷暗所(メーカー・製品によって気温の条件は異なります。)で、接着時の室温は10℃以上が好ましいです。
酸性のため金属を錆びさせます。道具や電動工具は金属の物が多いので、付着してしまったら速やかにふき取ってください。
耐水性が低いので水のかかる場所や屋外での使用には適しません。
エチレンを加えて、木・皮・布・紙と金属・塩ビの接着が出来るタイプもあります。
その他の木工用接着剤
アメリカのフランクリン社製の “タイトボンド” です。
木工業界のプロの間ではスタンダードな水性木工接着剤として使用されています。
色は黄色・黄褐色で、白ボンド(ホワイトグルー)に対し、“イエローグルー” と呼ばれています。
大きな特徴は、初期接着力が強力で硬化速度が速いという事です。
白ボンドの場合硬化するまで時間がかかりますが、タイトボンドは圧締時間が30分~1時間程度と短く作業効率が各段にアップします。
タイトボンド・オリジナルは、毒性は無く耐熱性・耐溶剤性・防カビ性に優れています。
タイトボンドⅢ・アルティメットは、毒性が無いのは勿論、耐水性に優れていて屋内外に使用する事が出来ます。
使用法。
キャップ部分を上側へずらし、接着面に適量塗布していきます。
硬化時間が速いので素早く張り合わせ固定具(クランプ等)で圧着します。
水性接着剤なので、はみ出た接着剤は水で湿らせたウエスでしっかり拭き取ります。
注意点、他。
酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤(白ボンド)は乾燥すると無色透明ですが、タイトボンドはベージュ系の色になります。
はみ出た余分な接着剤をしっかりと拭き取ることが重要です。
硬化後は接着剤自体が木材そのものよりも強度が出て、サンドペーパー等で研磨する事が出来ます。
ゴム系接着剤
ゴム系接着剤とは天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどを主成分とする接着剤です。
木材、金属、プラスチック、ガラス、タイルなど様々な種類の物質に使用する事が出来る、万能接着剤です。
建築内装や家具製作などで使用されるのが合成ゴム系接着剤で、中でも “クロロプレンゴム” を主成分とする接着剤が主に使われています。
クロロプレンゴム系溶剤形接着剤は淡褐色で粘り気があり、初期接着力が強いのが特徴です。
使用法。
クロロプレンゴム系溶剤形接着剤の使い方を、化粧合板を貼り合わせる工程を例に説明します。
張り合わせる面のちりやほこりなどを綺麗に取り除いておきます。
張り合わせる材料の両方の面にハケやヘラで均一に塗布していきます。(端の部分は内から外へ塗ります。外から内に塗ると接着剤がはみ出やすくなります。)
10分~20分程度乾かし、指で触れて接着剤がくっつかなくなったら張り合わせます。
初期接着力が強いので一度張り合わせると位置をずらしたりすることが出来ない為、正確な位置に張り合わせるように慎重に作業します。
張り合わせたら当て木をして玄翁等で叩いて圧着します。
張り合わせた部材はすぐに使用出来ますが、24時間静止させた方が強度が増します。
クロロプレンゴム系接着剤は木口テープ(合板の木口面に貼る化粧テープ)を貼る際にも使用されます。
合板の木口面と木口テープの接着面にハケで塗っていきます。
内から外へハケを倒し気味にして塗布します。(接着剤のはみ出しを防ぐため)
10分~20分乾かし、指で触れて接着剤がくっつかなくなったら張り合わせます。
ハンドローラーを使用し、圧着します。
注意点。
クロロプレンゴム系溶剤形接着剤は、はみ出てしまった接着剤を拭き取るにはシンナー(溶剤)を染み込ませたウエスで拭き取らなければなりません。
物質を溶かすのに用いる液体。シンナーやベンジンなどの有機溶剤のこと 。
接着剤自体に溶剤が含まれているので、使用する際には換気をよくして作業してください。
瞬間接着剤
瞬間接着剤とはシアノアクリレートと呼ばれる有機化合物を主成分とする接着剤で、接着面の水分に化学反応して一瞬で硬化します。
硬化時間が非常に短く、迅速な接着作業を行わなければならない為、広範囲の接着には向いていません。
圧着の必要が無いので作業性は良いですが、耐衝撃性が悪く、一回開封した使いかけを保存しておくことが難しいです。
プラスチック・ゴム・金属・木材などに使用出来ますが、接着剤を吸い込みやすい素材の接着には注意が必要です。
瞬間接着剤には低粘度の液体タイプから高粘度のゼリータイプまで色々な粘度タイプがあります。
液体タイプと高粘度タイプを接着剤や塗料が染み込みやすい木材の木口に塗布してみます。
液体タイプはすぐに染み込み木材の内部で硬化してしまい、他の物を接着する事が出来ません。
高粘度タイプは染み込みにくく接着も可能で、木材の様な素材に適しています。
エポキシ樹脂接着剤
エポキシ樹脂接着剤は、主成分のエポキシ樹脂に硬化剤を混ぜ合わせ使用する接着剤です。
金属・ガラス・陶磁器・タイル・石・コンクリート・木材に接着が出来、硬化後の体積の収縮が少なく、充填接着が可能です。
エポキシ樹脂と硬化剤を同量(質量比)絞り出し、均一になるまで混ぜ合わせます。
接着面に均一に塗り(凸凹や隙間が多い場合は両面に塗布する。)、すぐに張り合わせます。
硬化剤の種類によって硬化時間は異なります。
硬化時間(混ぜ合わせた接着剤が硬化し始める時間)、固定時間、実用強度達する時間を把握して作業する事が重要です。
エポキシ樹脂と硬化剤の蓋を間違えてしめてしまうと中身が硬化して使用出来なくなってしまうので注意が必要です。
弾性接着剤
ウレタン樹脂系
ウレタン樹脂系接着剤の中で代表的なのがシリル化ウレタン樹脂系接着剤です。
空気中の水分や接着面の水分に反応し硬化します。
硬化後は弾力性のあるゴム状で、衝撃吸収性に優れており強力な接着力を発揮します。
耐水性・耐熱性があるので、屋内・屋外・凹凸面・水回りでの使用が可能です。
様々な素材に使用出来、接着の難しいポリエチレン・ポリプロピレンを接着出来るタイプもあります。
通常は接着面の片側に塗布して接着しますが、広い面や金属・プラスチックの様な湿気を通さない物同士の接着時には両面に塗布し、素早く接着します。
開封後使い切れなかった場合は、容器内の空気を抜いて(空気中の湿気と反応し硬化する為)キャップを閉め、なるべく早めに使い切る様にしてください。
変成シリコーン樹脂系
変成シリコーン樹脂系接着剤はシリル化ウレタン樹脂接着剤と同様に、空気中の水分や接着面の水分に反応し硬化します。
硬化後は弾力性のあるゴム状で、衝撃吸収性に優れており強力な接着力を発揮します。
耐水性・耐熱性があるので、屋内・屋外・凹凸面・水回りでの使用が可能です。
“高性能コンクリート用” を使用しタイルを接着してみます。
タイルなど軽い物は線状または点状に接着剤を塗布します。
すぐにすり合わせるように押し付け、固定し、接着します。
様々な素材の接着に使用出来ますが、コンクリートとタイル・石材等の接着など、異種材料の接着に向いている接着剤です。
開封後使い切れなかった場合は、容器内の空気を抜いて(空気中の湿気と反応し硬化する為)キャップを閉め、なるべく早めに使い切る様にしてください。
酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤
酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤は、ペースト状で充填効果があるので凹凸面にも接着出来ます。
様々な素材に使用出来、コンクリートとタイル・木材の接着に適していますが、耐水性・耐熱性を必要とする箇所への使用は出来ません。
溶剤形接着剤なので使用する際には十分な換気をする事が必要です。
接着剤の選び方のポイント。
接着剤は硬化の仕方によって三種類に分けられます。
接着剤に含まれる水分や溶剤が蒸発して硬化します。
- 酢酸ビニル樹脂エマルション接着剤
- 酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤
主剤と硬化剤を混ぜ合わせて化学反応が起こり硬化するタイプと、空気中や接着面の水分と化学反応して硬化するタイプがあります。
- 瞬間接着剤
- エポキシ樹脂接着剤
- シリル化ウレタン樹脂接着剤
- 変成シリコーン樹脂系接着剤
接着面両方に塗布し、溶剤を十分蒸発させた後張り合わせるゴム系接着剤。硬化被膜は柔らかい。
- クロロプレンゴム系溶剤形接着剤
接着剤の硬化の仕方を踏まえた上で、選び方のポイントは
①何と何を接着するのか?
②接着する物の用途・使用環境は?
です。
①何と何を接着するのか?
接着し合う素材がどんな物なのか把握する事はとても重要です。
接着する物には、木材・金属・ガラス・プラスチック・タイル・コンクリートなど様々な素材があります。
素材を分類するには吸水性の有無・凹凸の有無・硬さ・重さ・耐溶剤性を見分ける必要があります。
吸水性の有無は、乾燥型接着剤や化学反応型の水分と反応して硬化するタイプを使用する際には注意が必要です。
乾燥や反応がうまくいかず接着不良になる場合があります。
凹凸がある場合は、充填接着が可能な接着剤を選ぶ必要があります。
硬さの硬い素材の接着には、硬化被膜の硬い接着剤(エポキシ樹脂系)を使用し、柔らかい素材には硬化被膜が柔らかい接着剤(酢酸ビニル樹脂系・ゴム系)を使用するのが基本です。
重さが重たい素材の接着には、硬化被膜が柔らかい接着剤だと剥離やズレを生じてしまうので硬化被膜の硬い接着剤(エポキシ樹脂系)を使用するのが基本です。
プラスチックなどの接着時に注意するのが耐溶剤性です。接着剤には溶剤が含まれている物も多く、素材を溶解してしまう可能性もあるので、溶剤との相性を確認する事が重要です。
②接着する物の用途・使用環境は?
用途・使用環境を把握しておくことは、接着後の不具合を起こさないために必要です。
用途・使用環境によって、接着剤に求められる性能が変わります。
耐水性・耐熱性・耐寒性・耐衝撃性・耐候性、どんな性能が必要か、しっかり確認してその性能を持ち合わせている接着剤を選んでください。
まとめ
今回はDIYにおいて主に使用される接着剤の種類と適切な選び方・使用法について説明しました。
接着剤は新たに開発された商品が次から次へと出ていて、様々な種類があり、何を選んだらいいのか悩まされるところです。
接着剤の硬化の仕方を理解し、接着する素材は何か?用途は?使用環境は?というポイントを押さえれば適切な接着剤を選ぶことが出来ます。
参考にしてみてくださいね。