木材加工や金属加工には、必ず ”研磨” の作業工程があります。
その研磨作業で使用されるのが、”サンドペーパー” です。
サンドペーパーには様々な種類があり、その中から研磨する素材・用途に適したものを選び、使用する必要があります。
今回は、サンドペーパーの種類と用途、選び方ついて解説していきます。
サンドペーパーとは?
サンドペーパーは、細かい研磨材(砥粒)を接着材で紙や布に塗布したヤスリです。
木材の粗削りから仕上げの研磨や、金属やプラスチックなどの研磨など、様々な素材の研磨に使用されます。
薄いペーパー状でサイズも色々あるので、広範囲の研磨・細部の研磨・曲面の研磨に適しています。
使用する際には、必要な大きさにカットして、そのままもしくはサンディングブロック(当て木)などに取り付けて使用します。
研磨系電動工具にも取り付けて使用され、それぞれの電動工具に合わせた専用のサンドペーパーがあります。
サンドペーパーは金属製のヤスリと異なり、使用していくにつれ目詰まり(研磨材の破片や研磨くずが研磨材の間に溜まる)を起こしたり、研磨材が剥がれたりして、研磨能力が落ちてきます。
研磨能力が落ちてきたら、新しいサンドペーパーに交換して研磨作業を継続する為、使い捨ての消耗品となります。
番手
サンドペーパーの目の粗さ(粒度)は、番手と呼ばれる単位で表し、#180 など数字の頭に#をつけて表記されます。
(#180は、180番と呼びます。)
数字の頭に付けられる ”#” は ”メッシュ” という単位で、1インチ平方内にあるふるいの目の数(網目数)を示すものです。
研磨材(砥粒)はふるいにかけて大きさを選別しています。
数字が大きくなる(ふるいの目の数が多くなる)ほど、一つ一つのふるいの目は小さくなり、通過出来る研磨材(砥粒)も細かくなります。
従って、番手の数字が大きくなるほどサンドペーパーの目も細かくなります。
一般的に、#40~#100までを ”粗目” 、#120~#240までを ”中目” 、#320~#800までを ”細目” 、#1000~を ”極細目” と呼び、研磨の仕上がりの目安としています。
サンドペーパーの種類
基材の材質による分類
研磨材(砥粒)を接着するための土台は ”基材” と呼ばれ、基材の種類によって使用方法・用途が異なります。
基材には、紙・耐水処理紙・布などがあります。
今回は、基材がペーパータイプでない研磨用品(基材がスポンジやパッド)もサンドペーパーの一種として紹介しています。
紙やすり
紙やすりは、空研ぎ(水を使用しない研磨)専用で、基材にクラフト紙を使用した最も一般的なサンドペーパーです。
洋紙研磨紙とも呼ばれ、主に木材(軟材)の軽研摩に使用します。
基材の強度があまり強くなく(破れやすい)、目詰まりも起こりやすいので、硬い木材や金属の研磨には向いていません。
紙やすりは、粗目で荒材の研磨やケバ取り、中目で荒材の研磨・素地調整、細目で塗装前の下地調整・仕上げ研磨などに使用されます。
空研ぎペーパー
空研ぎペーパーは、基本的に空研ぎ専用(水を研磨面に塗布して研磨する ”水研ぎ” に使用出来るタイプもある)で、紙やすり同様基材にクラフト紙を使用していますが、研磨面に目詰まり防止のコーティングが施されているのが特徴です。
紙やすりに比べて、研磨力が強く(数倍の研磨力)、耐久性が高い(目詰まりしにくい)サンドペーパーです。
硬材から軟材まで様々な種類の木材の研磨、樹脂などの目詰まりしやすい素材の研磨、サンダー等の研磨系電動工具の交換用サンドペーパーなどに使用されます。
空研ぎペーパーは研磨力が強い為、粗目での研磨では、素材に傷を付けてしまう場合があるので注意が必要です。
木工における研磨作業に最も適しており、中目(#180~#240)で素地調整・塗装前の下地調整、細目(#320~#400)で塗装前の下地調整・仕上げ研磨などに使用されます。
耐水ペーパー
耐水ペーパーは、基材に耐水処理紙を使用し、空研ぎと水研ぎ(水を研磨面に塗布して研磨する事)両方の研磨が可能なサンドペーパーです。
木材・金属・樹脂・石材・陶器など、様々な素材の研磨に使用されます。
耐水ペーパーの特徴である水研ぎは、湿式研磨とも呼ばれます。
(湿式研磨に対し、空研ぎは乾式研磨と呼ばれる)
水研ぎ(湿式研磨)は、水や油を塗布しながら研磨するので、研ぎカスが排出されやすく目詰まりしにくくなります。
よって、サンドペーパーの耐久性が高くなり研磨面も綺麗に仕上げることが出来ます。
細目・極細目を使用して、木材・金属・樹脂などの塗装前下地調整・仕上げ研磨に使用されます。
布ヤスリ
布ヤスリは、基材に丈夫な綿布を使用しており、破れにくく耐久性が非常に高い空研ぎ専用のサンドペーパーです。
金属の酷いサビ落しやバリ取り、古い塗装はがしなど、耐久性を求められる研磨に使用されます。
広範囲の研磨や強い研磨力が必要な場合は、当て木や取っ手が付いているサンドペーパーホルダー、サンダーに取り付け研磨します。
金属や木材だけでなく、コンクリート面の研磨等にも使用されます。
ベルトサンダーに使用する ”サンディングベルト” も布ヤスリの一種になります。
研磨フィルム
研磨フィルムは、基材に合成樹脂フィルムを使用し、研磨材をコーティングしたサンドペーパーになります。
非常に細かい微粒子の研磨材をコーティングしている為、主に精密仕上げ研磨(金属製品の磨き・プラスチックの研磨など)に使用されます。
乾式・湿式両方の研磨使用が出来、研磨面は研磨キズが付きにくく、均一な仕上げになります。
スポンジ研磨材
スポンジ研磨材は、基材にスポンジを使用し、研磨材を塗布したものです。
スポンジの適度な弾力・柔軟性によって、曲面や複雑な形状の素材の研磨に適しています。
木材・金属の研磨、古い塗装はがしなどに使用され、乾式・湿式両方の研磨が出来ます。
目詰まりしにくく、水洗いが可能です。
不織布(化学繊維)の研磨シート・パッド
基材にナイロンなどの化学繊維を使用した不織布(ふしょくふ)を使い、研磨材を均一に付着させた研磨シート・パッドです。
基材の不織布は多孔質構造(細かい穴が多く開いている)が特徴で、目詰まりがなく、破れずらい為、耐久性が非常に高くなります。
乾式・湿式両方の研磨使用が出来、柔軟性があるので様々な形状・箇所の研磨が可能です。
金属のサビや汚れを落としたり、木材の下地研磨など様々な素材の研磨に使用されます。
網目研磨布(ポリネットシート)
網目研磨布(ポリネットシート)は、基材に網目状の合成繊維を使用し、両面に研磨材が塗布されたものになります。
基材が網目状になっている為、目詰まりしにくく、耐久性が高い研磨布です。
乾式・湿式両方の研磨使用が可能で、両面使用が出来ます。
電動工具サンダー様にカットされているタイプもあります。
木材の研磨、金属の研磨・サビや汚れ落とし、古い塗装はがしなどに使用されます。
形状による分類
シート形状
サンドペーパーは、四角のシート状(230mm×280mm)が基本形で、適切な大きさにカットして使用します。
電動工具のサンダー(サンドペーパー取り付け部分が四角のタイプ)や、サンディングブロックのサイズにカットされている専用のサンドペーパーもあります。
電動工具サンダー用サンドペーパーには、裏面がマジック脱着式になっているものもあり、サンダーのパッドコンプリートをマジックファスナ用に交換すると、サンドペーパーの脱着が簡単に出来るようになります。
シート形状のサンドペーパーを取り付ける道具
- サンディングブロック
- サンドペーパーホルダー(広範囲の研磨、強い研磨力が必要な場合などに使用。クランプでしっかりサンドペーパーを保持できる。)
- オービタルサンダー
ロール形状
電動工具のサンダー(サンドペーパー取り付け部分が四角のタイプ)やサンディングブロック・パッドの幅に合わせた帯状のサンドペーパーを、ロール状に巻いてあるタイプです。
適切な長さにカットして使用します。
ロール状のサンドペーパーには、裏面がマジック脱着式や粘着式になっている物があり、脱着が簡単に出来るようになっています。
マジック脱着タイプのサンドペーパーは、マジック脱着用サンディングブロックに張り付けて使用します。
ロール形状のサンドペーパーを取り付ける道具
- サンディングブロック
- サンドペーパーホルダー
- オービタルサンダー
ベルト形状
ベルトサンダーに使用するサンドペーパーで、ベルト状の一つの輪になっているタイプです。
サンディングベルトと呼ばれます。
帯状のサンドペーパーをベルト状に接合してあるタイプと、接合部分がない ”袋織り” タイプがあります。
ベルト形状のサンドペーパーを取り付ける道具
ディスク形状
電動工具のサンダーの中でも、ランダムサンダーのようにサンドペーパー取り付け部分が円形のタイプに使用される、円形のサンドペーパーです。
ディスクペーパーやサンディングディスクと呼ばれます。
ディスク形状のサンドペーパーは、裏面がマジック式になっており、脱着が簡単に出来るようになっています。
ディスク形状のサンドペーパーを取り付ける道具
スリット加工による自在形状
サンドペーパーに切り込み(スリット)が入っていて、丸めたり自在に形状を変える事が出来ます。
丸めると凹凸面や曲面によくなじみ、隅々までしっかり研磨する事が可能です。
サンドペーパーの選び方
サンドペーパーを選ぶ基準は、
①研磨する素材は何か?
②研磨作業の内容に適した番手は?
③使用する道具・工具は何か?
になります。
研磨する素材に適したサンドペーパーの種類
研磨する素材 | 適したサンドペーパーの種類 |
木材 | 空研ぎペーパーは、粗削り~塗装下地研磨~仕上げ研磨まで一通り出来るので、最適です。
耐水ペーパーや研磨フィルムなども、仕上げ研磨として適しています。 |
金属 | 耐久性が非常に高い布ヤスリ、目詰まりしにくい耐水ペーパーや不織布の研磨シート・パッド、網目研磨布(ポリネットシート)などが適しています。 |
樹脂 | 耐水ペーパー、空研ぎペーパー、研磨フィルムなどが適しています。 |
陶器・石材 | 耐水ペーパー、不織布の研磨シート・パッド、網目研磨布(ポリネットシート)、研磨フィルムなどが適しています。 |
研磨作業内容と適切な番手
番手 | 研磨作業内容 |
#40~#100(粗目) | 木材の粗削り
金属のひどいサビ落とし 劣化の激しい塗装面のはがし |
#120~#240(中目) | 木材の塗装前下地調整
軽度のサビ落とし 塗装塗り替え時の下地研磨 |
#320~#800(細目) | 木材の仕上げ研磨・重ね塗装時の研磨
金属の塗装の下地調整 樹脂の塗装の下地調整 |
#1000~(極細目) | 金属の仕上げ・磨き
樹脂の仕上げ・磨き 陶器の汚れ取り・磨き 石材の研磨 |
サンドペーパーを使用する道具・工具
サンドペーパーはそのままでも使用出来ますが、電動工具などに装着して使用する場合も多くあり、適切なサンドペーパーを装着する必要があります。
サンディングブロック・サンドペーパーホルダー・電動サンダー・ベルトサンダーなど、取り付け部分の形状は様々で、専用もしくは形状を合わせてカットしたサンドペーパーを使用します。
※前述のサンドペーパーの種類・形状による分類を参照してください。
素材に適していないサンドペーパーを使用した場合、研磨作業の効率を悪くしてしまう(目詰まりやペーパーの破損の多発)事になります。
研磨工程にあっていない番手のサンドペーパーを使用すると、仕上がりの良し悪しに影響し、素材に傷をつけてしまう場合もあります。
装着する道具・工具に適していないサンドペーパーを使用すると、ペーパーの破損や、集塵機能がうまく作動しなかったりします。
①研磨する素材は何か? ②研磨作業の内容に適した番手は? ③使用する道具・工具は何か? を総合的に考え、サンドペーパーを選ぶ必要があります。
まとめ
今回は、サンドペーパーの種類と用途、選び方について解説しました。
サンドペーパーには様々な種類があり、それぞれの特性をよく理解しておくことが重要です。
研磨する素材(木材・金属・プラスチック等)・用途(塗膜のはがし・サビ落とし・塗装前の下地研磨等)を見極め、適したサンドペーパーの種類と番手を選ぶことによって、効率の良い研磨作業が可能になります。
参考にしてみてくださいね。