ウッドデッキ作りのプランニング(設計・材料の購入・道具の準備)が決まったら、いよいよ実際に製作しはじめます。
まず初めに行う作業が、地縄張り(じなわばり)・水盛り(みずもり)・遣り方(やりかた)です。
何もない地面に正確な水平・直角の出ているウッドデッキを作り上げる為に、非常に重要な工程です。
今回は、地縄張り・水盛り・遣り方のやりかたについて説明していきます。
地縄張り・杭打ち
今回は、掃き出し窓の下に約3メートル四方のウッドデッキを制作していきます。
まず初めに行うのが “地縄張り” です。
地縄張りとは、これからつくるウッドデッキの位置を、地面に杭を打ち込みひも(縄)を張ってしるす作業の事です。
今回は杭にロープ止め、地縄に水糸を使用します。
今回のウッドデッキは母屋の基礎を基準として作ります。
ウッドデッキの4つの角のうち、母屋側の一つの角を基準点とし杭を打ち込み、地縄を張っていきます。
母屋の基礎面から所定の寸法をさしがねで測り、杭を打ち込みます。
基準点の反対側の角に杭を打ち込みます。
基準点から所定の寸法(ウッドデッキの横幅)を測ります。
その地点が母屋基礎・基準点間の所定寸法と同じになる様に、さしがねで測り杭を打ち込みます。
母屋側にウッドデッキの一辺にあたる地縄が張れました。
母屋側に張った地縄の角から、さしがね等を使用し直角方向に地縄を伸ばしていき、所定の寸法の位置に杭を打ち込みます。
「4つすべての角が直角の4角形は、2つの対角線の長さが等しくなる」法則を利用し、対角線の長さが等しくなっているか確認します。
4つの角に杭を打ち込みひもを張ったら地縄張りの完了です。
次の工程(水盛り・遣り方)で水平の印をつける杭を水杭(みずくい)と呼び、地縄を目安に打ち込みます。
地縄の四つ角にそれぞれ3本ずつ水杭を打ち込んでいきます。
今回は30mm角・長さ600mmの木杭を使用します。
水杭の長さは打ち込んだ際、基礎(束石・つかいし)の高さより150mm程度高くなる様に設定しています。
地縄から外側へ150mm程度離れた場所に水杭を打ち込みます。
水杭は地面に対して垂直になるように打ち込みます。
隣り合う杭同士を一直線上に並べ、3本の杭で直角を形成する様に杭を打ち込みます。
水杭は基本的に地縄の外側に打ち込みますが、入隅(いりずみ・凹になっている角の事)や今回の母屋側の杭(地縄の外側に杭を打ち込むスペースが無い)の様に、状況によっては地縄の内側に水杭を打ち込む場合もあります。
4つの角にそれぞれ3本ずつ杭を打ち込み終えました。
水盛り・遣り方
水盛り
水平を出す作業を、“水盛り” といいます。
プロ(業者)の方が水平を出す時はレーザー墨出し器等機械を使用しますが、今回は水の特性を生かしホースに水を入れ水平を出す方法で水盛りを行います。
バケツと透明ホース(直径8mm・長さ約3m)を用意します。
バケツに水を張り、ホースの端部を水に入れバケツに固定します。(ホースの固定箇所がつぶれないように注意してください。)
バケツをウッドデッキの中央に設置します。(ブロックを敷いてバケツの安定と高さ調節をしています)
ホース内には水が入っていないので、ホースの端から口で水を吸い出します。
ホースの端まで水が充満し出てきたら、ホースの端をバケツ内の水位より高く上げて保持します。
この時水の特性によって、ホース内の水位とバケツ内の水位が常に同じ高さになります。
ホースをバケツ内の水位より高い位置で保持し、水杭に沿わせます。
ホース内の水位が安定したら、水杭に水位の位置を墨付けします。
すべての水杭に同じ様に水位の位置を墨付けをしていきます。
ホース内の水位は常にバケツ内の水位と同じなので、すべての杭に同じ高さ(同じ水平面)の位置に墨付けをする事が出来ます。
水杭に印した水位の精度がウッドデッキの出来を左右するので、全ての水杭に墨付けした後もう一度ホースを水杭にあてがい、再確認します。
水杭に墨付けする高さの設定に関しては、“水糸を張る” 工程で説明します。
遣り方
水盛りで水杭に水平の墨付けをした後、水貫と呼ばれる板を墨に合わせ固定し出来た囲いの事を “遣り方(やりかた)” と言います。
今回は水貫にコンパネ(12mm厚)を幅80mm程度に割いたものを使用します。
(水貫は基礎部分を作り上げるまで風雨にさらされる可能性がある為、狂いが出ずらいコンパネを選んでいます。)
水貫を2本の水杭の墨に合わせてクランプで固定します。(水平器で水平を確認)
ビスで水貫を固定します。(水杭がビス止めの振動でずれないように注意します。)
地縄の角を覆う様に、一つの角に2枚の水貫を固定していきます。
4つの角すべての水杭にそれぞれ2枚ずつ水貫を固定し、遣り方の完成です。
水糸を張る
建物の基礎工事やブロック・レンガ積みなどの外構工事には、水平・直線を指し示す為に “水糸” と呼ばれる専用のひもを使用します。
今回は遣り方で固定した水貫に水糸を結びつけ、ウッドデッキの基礎(束石)の基準(水平・直線)とします。
基準の水糸を張る
母屋側に基準となる水糸を張ります。
さしがねを使用して母屋の基礎から所定の寸法を測り、水貫に墨付けします。
墨付けした箇所に釘を打ち込みます。
反対側の水貫にも同じように墨付けし、釘を打ち込んでおきます。
釘を基準にして水貫に水糸を巻き付け固定し、反対側の水貫にも水糸を同じように固定します。
水糸は徐々に緩んでたわんでしまうことがあるので、しっかりテンションをかけた状態で固定します。
母屋側に張った基準となる水糸を①の水糸とします。
※本来は地縄の真上に水糸が通りますが、今回は水杭を地縄の内側に打ち込んでいるので、水糸も地縄の内側に張られています。
大矩を使用し、直角に交わる水糸を張る
①の水糸に直角に交わる水糸を張っていきます。
今回のウッドデッキの横幅の基準は掃きだし窓の窓枠とし、その基準をさしがねを使って水貫にうつし墨付けします。
墨付け位置に釘を打ち、水糸を固定します。
①の水糸と大体直角に交わる様に水糸を伸ばしていき、反対側の水貫に仮止めします。
水糸同士を正確な直角で交わる様にするには、“大矩(おおがね)” と言う道具を使用します。
大矩とは、大きな木材や石材の計測や墨付け・直角の確認(さしがねでは困難な大きさの物)を行う直角定規の事です。
水糸同士の直角を確認する際、さしがねでは確認できる範囲が狭く精度が悪くなります。
大矩を使用すると、確認できる範囲が広くなり精度の高い直角に水糸を調整する事が出来ます。
水糸の直角を確認しやすくする為、大矩を自作し使用します。
5.5mm厚のラワンべニアを100mm程度に割いた材を3枚用意します。
そのうちの直角に交わる2辺になる材の中央に、墨線を引いておきます。
三角形の3つの辺の比が3:4:5である時、必ず直角三角形になる原理を利用し、3枚の材をビス止めして大矩の完成です。
水糸の下に大矩を設置しますが、水糸の交点を真上から見下ろし、①の水糸と大矩の墨線および水糸の交点と大矩の直角の角が重なる様にします。
誤差を少なくする為、なるべく大矩を水糸に近づけて設置します。
仮止め側の水糸を左右に動かして、大矩の墨線に水糸がピッタリ重なる(水糸の交点を真上から見下ろす)様に調整します。
大矩の墨線に水糸が重なったら、仮止め側の水貫に釘を打ち込み水糸を固定します。
①の水糸と直角に交わる水糸(②の水糸とする)を張る事が出来ました。
寸法・直角を確認しながら残りの水糸を張る
②の水糸の反対側に水糸を張ります。
新たに張る水糸は、①の水糸と直角に交わり、②の水糸との距離がウッドデッキの横幅と一致する位置に張ります。
ウッドデッキの横幅は、①と②の水糸の交点から①と新たに張る水糸の交点までの寸法を正確に測る必要があります。
①と②の水糸の交点にメジャーのツメを引っ掛ける事が出来ないので、交点の延長上の水貫にツメを引っ掛け寸法を測ります。
メジャーが指し示す値から水貫と交点までの長さを引いた値が、交点からの水糸の長さになります。
メジャーがたわまないようにウッドデッキの横幅寸法を測ります。
横幅の寸法値に、母屋基礎面と直角を保ったさしがねを合わせ、水貫に墨付けします。
水貫の墨付け位置に釘を打ち込み、水糸を固定します。
①の水糸と新たに張る水糸が大体直角に交わる様に、反対側の水貫に仮止めします。
①と②の交点を直角にした方法と同じやり方で、①と新たに張る水糸の交点を直角に調整し、水糸を固定します。(新たに張った水糸を③の水糸とします。)
②から③の水糸に向かって最後の水糸を張ります。
③の水糸を張った方法と同じやり方で、①と②の交点からウッドデッキの長さを正確に測り、水貫にさしがねを使用し墨付けします。
墨付けした位置に釘を打ち込み水糸を固定します。
仮止めした水糸を調整しながら、大矩で水糸の交点の直角を確認します。
同時に③の水糸の交点間の寸法がウッドデッキの長さになっているか確認し、水糸を固定します。
もう一度、大矩で4つ角の直角・メジャーで各辺と対角の長さを確認し狂いがなければ、水糸の張り終わりです。
水糸の高さ設定について
水糸は基礎(束石)を作る際の基準になります。
基礎(束石)の間近に張ればより正確な基礎作りが出来ます。
しかし水糸が基礎(束石)に近いと、基礎(束石)の下を掘り下げる等後の工程で、水糸が邪魔になってしまいます。
水糸が基礎(束石)から離れすぎても誤差が出やすくなってしまいます。
ウッドデッキの設置場所の条件にもよりますが、基礎(束石)天端から100mm程度高い位置に水糸を張ります。
水盛りで墨付けした水平面が水糸を張る高さになるので、バケツ内の水を増減して水位を調整し、水糸を張る高さを調整しておきます。
ただし水糸の正確な高さ設定はあまり必要無く、あくまでも作業の邪魔になりずらくなるべく基礎(束石)に近づけて張る様にします。
まとめ
今回は、ウッドデッキを作る際の一番最初の工程、地縄張り・水盛り・遣り方について説明しました。
この工程を正確に行わないと、後の工程に影響が出て、最終的にウッドデッキの出来が悪くなってしまいます。
ウッドデッキをDIYするとなると、かなりの時間(労力)と材料費がかかります。
そんな時間と費用がかかるウッドデッキを失敗しないためにも、地縄張り・水盛り・遣り方の工程をしっかり正確に行う様にしましょう。
次回は今回張った水糸を基準に基礎を作る工程、束石を使用した独立基礎の作り方とは? です。