トリマーは面取り加工・溝加工・ならい加工など様々な切削加工が出来る、木工ではなくてはならない電動工具の一つです。
様々なアタッチメント(ストレートガイドやテンプレットガイドなど)やビットを組み合わせて使用する事で、切削加工の幅を大きく広げる事が出来ます。
今回はトリマーのアタッチメントの一つ、「プランジベース」の構造と使い方について詳しく解説していきます。
プランジベースとは?
プランジベースは、トリマーに取付けて使用するアタッチメントの一つで、プランジ機能が付属しているルーターと同様の加工を可能にしてくれます。
今回は、マキタの充電式トリマー「RT50D」(及びRT40D)用のプランジベースを用いて、プランジベースの構造と使い方について解説していきます。
マキタの充電式トリマー「RT50D」に関しては、マキタ充電式トリマー・RT50Dのレビュー の記事を参照してください。
トリマーと違い、ルーターは本体とベース部がスライドポールによって一体化しており、本体を垂直方向に上下出来る機能が「プランジ機能」になります。
通常トリマーは、ルーターのようなプランジ機能は付属しておらず、一度切り込み深さを設定したら始動後にビットの出を変える事は出来ません。
部材の途中から溝を切削する場合は、切削始めと終わりにトリマー本体を傾けて切削する事になります。
プランジベースには垂直方向に上下出来るプランジ機能が付属しているおり、トリマーに取付ける事によりプランジ加工(垂直方向への切削加工)が可能になります。
始動後にビットを回転させたまま本体を上下出来る為、加工材の途中に溝を切削する途中溝の加工や、穴あけ加工・彫り込み加工・平面出し加工などが容易に安定して出来るようになります。
各部名称
プランジベースは、ルーターのプランジ機能部分とほぼ同じ構造になります。
プランジベースには、切り込み深さを調整する「ストッパポール」「ストッパベース」、トリマー本体を固定する「レバー」、プランジ機能を固定する「ロックレバー」などが付属しています。
取付方法
トリマーからベースを取り外したら、トリマー側面の溝とプランジベースのレバー裏の突起を合わせてトリマー本体を差し込みます。
レバーを閉じてトリマーを固定します。
プランジベースの開口部はトリマーベースの開口部より大きい為、刃径の大きなビットを使用する事が可能になります。
プランジベースに関しては、以下の動画でも詳しく解説しています。
プランジベースの使い方
切り込み深さ調整
固定ナットを緩め、ボタンを押しながらストッパポールを引き上げておきます。
ビットを取り付けた状態でプランジベースを押し下げ、ビットが突き当たったらロックレバーで固定します。
ボタンを押しながらストッパポールがストッパベースに突き当たるまで下げます。
ストッパポールが突き当たった状態で切り込み深さマーカーを目盛りゼロに合わせたら、切り込み深さ分(切り込み深さマーカーを基準にして)ストッパポールを引き上げ、固定します。
ストッパポール下端とストッパベース間の寸法が実際の切り込み深さになります。
ストッパベースは回転させる事が出来るので、ストッパポールの固定位置を変えずに切り込み深さを変える事が出来ます。
基本の操作方法
切削加工時、プランジベースはストッパポール側を作業者側に向け両手で保持するようにします。
プランジベースを両手で保持する為、加工材・ガイド等はクランプ等で固定しておきます。
ベースプレートの形状
プランジベースのベースプレート形状には、直線部分とR部分があります。
ベースプレートのどの部分をガイドに沿わせるかによって、トリマーの進行方向・ガイドの設置位置が変わります。
ベースプレートの直線部をガイドへ沿わせる場合は、トリマーを横方向へ移動させて切削します。
トリマーの手前側にガイドを設置する場合は、右から左へトリマーを移動し切削します。
反対にトリマーの奥側にガイドを設置する場合は、左から右へトリマーを移動し切削します。
ベースプレートのR部分をガイドへ沿わせる場合は、トリマーの進行方向の左側にガイドを設置するようにしてトリマーを送ります。
加工材の途中から溝を切削する場合(ガイドをトリマーの手前に設置した切削例)
切削開始位置にトリマーを設置したら、電源スイッチを入れビットを回転させます。
ビットの回転が落ち着いたら、プランジベースを押し下げ垂直方向に切削していきます。
ビットが切り込み深さ下端に到達したら、ロックレバーで固定し水平方向へ切削していきます。
切削終わりは、ビットが回転したままロックレバーを解除しプランジベースを引き上げ、電源スイッチを切ります。
加工材の端から切削する場合(ガイドをトリマーの手前に設置した切削例)
加工材の端から切削する場合は、切削始めと終わりにプランジベースが不安定になりがちです。
加工材にビットが触れない位置で切り込み深さ下端までビットを出し、ロックレバーで固定してから電源スイッチを入れ切削します。
あらかじめプランジ機能を固定しておく事で、始動後安定した加工が出来ます。
ストレートガイド
プランジベースには専用のストレートガイドがあり、取付穴に差し込みツマミネジで固定します。
加工材の側面をガイドとした溝加工などを行う事が出来ます。
テンプレットガイド
プランジベースには、テンプレットガイドを取り付ける事が出来ます。
ベース部の固定ネジを外しテンプレットガイドをはめ込んだら、固定ネジを締め付け取り付けます。
プランジベースでもテンプレットガイドを装着し、テンプレートを使用したならい加工や窓あけ加工が出来ます。
特に窓あけ加工の様に切り込み深さが深くなる切削では、切削前から確実にビットをテンプレート内にセット出来るので安定した加工が可能になります。
テンプレットガイドには中央の穴径の異なる物があるので、一緒に用いるストレートビットも様々な刃径のビットを使用する事が出来ます。
ダクトノズル
プランジベースには、専用のダストノズルを取り付ける事が出来ます。
集塵機に接続すると、ある程度切削屑を集塵する事が可能です。
プランジ刃付ビット
プランジベースを使用して、ストレートビットで垂直方向に切削する「プランジ加工」を行うには、プランジ刃付のビットを使用する必要があります。
通常のストレートビットの場合、切削刃が付いている位置がビットの側面と先端の一部になり、先端の中央部には切削刃が付いていません。
その為プランジ加工をすると、切削抵抗が強く、穴の中央部に切削出来ない箇所が出来てしまいます。
プランジ刃付ビットは、切削刃がビット側面と先端の一部に加え、中央部(プランジ刃)が付いています。
※プランジ刃の形状はメーカーにより異なります。
ビットの先端面すべての範囲を切削出来るように切削刃が付属しているので、プランジ加工による穴あけでも切削残しが無く加工出来ます。
プランジベースで出来る加工
溝加工(途中溝・止め溝)
加工材の途中に溝を切削する(途中溝や止め溝)場合は、プランジベースを装着して切削加工すると安定した加工が可能になります。
通常トリマーで途中溝を加工する場合、切削始めと終わりにトリマーベースを支点にトリマーを傾ける必要があります。
プランジベースを使用すると途中溝の切削始め位置と終わり位置で、プランジベースを加工材に密着させた状態でビットを垂直方向に上下出来る為、トリマーを安定した状態で切削加工する事が可能になります。
穴あけ加工
プランジ機能を使用すると、穴あけ加工が可能になります。
だだし、ガイドや治具を使用せずフリーハンドで穴あけ加工を行うと、トリマーが動き正確な穴をあける事が出来ません。
今回は、自作治具とテンプレットガイドを併用して正確な穴あけ加工を行う方法を紹介します。
使用するテンプレットガイドの円筒部の外径を計測したら、治具材に十字に基準線を引き、基準線の中央に円筒部がピッタリはまる貫通穴をあけます。
※治具材は、ベースプレート面をカバーできる大きさで、ベースプレートからテンプレットガイド先端の出っ張り寸法より厚い物を用意します。
穴あけ位置へ十字の墨線を引いたら、治具の十字線を合わせ、両面テープで固定します。
治具の穴へテンプレットガイドの円筒部をはめたら本体を押し下げ、穴加工をしていきます。
治具とテンプレットガイドを使用する事で、正確で綺麗な穴あけ加工が出来ます。
ほぞ穴加工
テンプレートを使用したほぞ穴加工の様に深い溝を切削する場合は、プランジベースを使用する事でトリマーを安定させ正確な加工が可能になります。
通常のトリマーで深いほぞ穴を切削する場合は、ビットの出が大きくなる為、切削始めと終わりにトリマーをかなり傾けた状態から徐々に立てていき切削する事になります。
その際テンプレットガイドをテンプレート内に設置していく事が難しく、ほぞ穴からずれた箇所を誤って切削してしまいがちです。
プランジベースを使用すると、切削前(始動前)からテンプレットガイドをテンプレート内に設置できるので、正確なほぞ穴を切削する事が出来ます。
ディッシュ(彫り込み)加工・平面出し加工
ディッシュビットによる彫り込み加工やプレナービットによる平面出し加工の場合は、プランジベースを使用するとトリマーを安定させた切削加工と作業効率を高める事が出来ます。
ディッシュ加工は、テンプレートとコロ付きディッシュビットを使用して行います。
深い切削を行いますが、始動前にテンプレート内にビットを設置できるので、間違ってテンプレート自体を切削するようなことがありません。
ディッシュ加工は、切削範囲が広くなる為、通常のトリマーではベース面が小さいのでテンプレートから外れて切削出来ない箇所が出来てしまう事があります。
プランジベースのベース面はトリマーベースより広い為、ある程度切削範囲が広くてもテンプレートから外れることなく切削加工が出来ます。
(プレンジベースのベース面が外れるほど切削範囲が広い場合は、治具等が必要になります)
平面出し加工は治具を使用して行いますが、プランジベースを使用すると切り込み深さ調整が容易に出来る為、切削作業の効率が良くなります。
まとめ
今回は、トリマーに取付けて使用する「プランジベース」の構造と使い方について解説しました。
トリマーで垂直方向への切削を行う場合は、ビットを切り込み深さ分出した状態で本体を傾けて行う必要があり、切削深さが深くなればなるほどトリマーのコントロールが難しくなります。
プランジベースを取り付ける事で、垂直方向への切削が容易になり、安定した加工が出来るようになります。
その他にも穴あけ加工や彫り込み加工など、通常のトリマーでは難しい加工も可能になります。
今回説明に使用したプランジベースは、マキタの充電式トリマー「RT40」「RT50D」専用となります。
プランジベースについての解説を動画でご覧になりたい方は、以下の動画を参照してください。