家具や建具の開閉部には、丁番が使われますが、扉の開閉方向によっては、扉を保持する支えが必要になる場合があります。
そのような場合に扉などを支えるのが、 ”ステー(stay)” と呼ばれる金物になります。
ステー(stay)とは、主に上下方向に開閉する扉を開けた際に、開けた状態を保つための支えとなる金物になります。
扉は開閉の仕方により、下開き(前蓋・まえぶた)・上開き・上蓋(うわぶた)があり、それぞれの開き方に合わせて専用のステーがあります。
今回は、下開き(前蓋)用ステーの種類と取り付け方法について説明していきます。
下開き(前蓋)用ステーとは?
下開き(前蓋)用ステーとは、戸棚やライティングテーブルなど扉(前蓋)が閉まった状態から前方に開く(下開き)際に、扉が90°以上開かない様保持するステーになります。
下開き(前蓋)用ステーには、前蓋用ステー(折り畳みタイプ)・前蓋用ステー(丸棒タイプ)・機能付きステー(ソフトダウンステーなど)があり、側板内側と扉内側にビス止めして取り付けます。
下開き(前蓋)用ステーの種類別取り付け方法
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、ステー中央部の鋲を支点に、側板取付側アームと扉取付側アームが開閉する構造になっています。
(今回使用している前蓋用ステーは最大160°まで開きます)
側板の内側と扉の内側にビス止め・固定して使用しますが、右の側板に取り付ける右用と、左の側板に取り付ける左用があります。
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、扉が90°開いた時(扉が全開)にアーム同士が全開の状態になり、扉が閉じていくと鋲を支点に側板取付側アームと扉取付側アームが徐々に折り畳まれていきます。
取り付け方法
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)の取り付けは
①側板取付ベースの位置(側板内側)を決め取り付け
②扉を90°(全開)開き、ステーを全開(160°開く)させた状態で扉取付ベースの位置(扉内側)を決め取り付け
の手順になります。
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能ですが、扉全開時(ステーのアームも全開状態)に扉・側板に対して45°の角度になる様に取り付けるのが基本となります。
今回紹介する取付方法も、基本に沿って(45°の角度に取付)説明していきます
側板取付ベースの前後方向の取り付け位置は、ステーを全閉した状態で決めていきます。
全閉した状態で扉取付ベースが側板木端面より外側へ出てしまうと、扉が閉じ切らなくなる可能性があります。
したがって全閉時扉取付ベースが側板木端面より内側に来るように側板取付ベースを取り付ける様にします。
ただし側板取付ベースは極端に内側へ取り付けると、収納の邪魔になったり、開閉が出来なくなったりするので、今回は全閉時に扉取付ベースと側板木端面が面になる位置へ取り付けることとします。
側板取付ベースの上下方向の取り付け位置は、ステー全開状態における側板取付ベースの鋲から扉取付ベースの鋲までの寸法①と、扉取付ベースの鋲から扉接地面までの寸法②を元に決めます。
側板取付ベースの上下方向の取り付けは、寸法①を斜辺とする二等辺三角形の一辺の寸法③と寸法②を合計した位置になります。
寸法③は三平方の定理から、寸法①を√2(約1.4)で割った数値になりますが、細かい数値は必要ないので小数点以下は切り捨てます。
側板取付ベースの取付位置が決まったら、位置がずれない様にビスの位置に千枚通しで印をつけ、ビス止め・固定します。
側板取付ベースを固定したら、扉を全開(90°開)させ、ステーの全開状態を保ったまま、扉取付ベースを扉に突き当てていきます。
突き当てたら、ステーの全開状態を保ったまま側板とステーを平行にし、ビスの位置に千枚通しで印を付け、ビス止め・固定します。
※扉全開(90°開)の際にステーが全開状態で取付られていないと、90°以上扉が開いてしまったり、丁番に負荷がかかるなど不具合が生じてしまいます。必ずステーの全開状態を保持して取り付ける様にしてください。
扉の開閉に不具合が無いが確認したら、前蓋用ステー(折り畳みタイプ)の取り付け完了です。
取付位置の注意点
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能ですが、取付位置によっては扉の開閉が不可能になったり扉を支える強度が弱まってしまう場合があり、注意が必要です。
1つ目の注意点は、側板取付ベースを側板木端面からどの程度内側に取り付けるか(取付位置の前後方向)という点です。
側板取付ベースを極端に内側に取り付けると、扉の開閉は可能ですが、収納物へステーが干渉したり、扉を支える強度が弱まる(扉取付ベース位置が丁番寄りになる為)可能性があります。
従って側板取付ベースはなるべく側板木端面に近づけて取り付けるようにします。
2つ目の注意点は、側板取付ベースを側板内側のどの程度の高さに取り付けるか(取付位置の上下方向)という点です。
側板取付ベースを極端に高く取り付けると、扉の開閉は可能ですが、扉を支える強度が弱まる(扉取付ベース位置が丁番寄りになる為)可能性があります。
また側板取付ベースを極端に低く取り付けると、ステーの角度が小さくなる為扉を支える強度が弱まったり、扉の閉時にステーのアームが扉に干渉して閉まらなくなる可能性があります。
前蓋用ステー(折り畳みタイプ)は45°の角度に取り付けるのが基本ですが、多少取付ベースがずれ45°の角度に取り付けられなくても扉の開閉と扉開時の保持機能を正常に機能させることが出来ます。
しかし、側板取付ベースを極端な位置に取り付けると扉の開閉が出来なかったり、扉を支える強度が弱まってしまう場合がある為、側板取付ベース取付位置の前後・上下方向の許容範囲に注意してステーを取り付ける必要があります。
前蓋用ステー(丸棒タイプ)
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は、アーム(丸棒)がアームガイドを貫通する横穴を通ってスライドする仕組みになっており、アームガイド自体も回転する事が出来ます。
側板取付ベースを側板の内側へ、扉取付ベースを扉内側へそれぞれそれぞれビス止め・固定して使用しますが、アーム(丸棒)が回転する為、左右兼用になります。
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は、扉が90°開いた時(扉が全開)にアームに付属しているストッパナットがアームガイドに突き当たって扉を保持します。
扉を閉じていくとアームガイドが回転しながら、アームがアームガイドの中をスライドし、全閉します。
取り付け方法
前蓋用ステー(丸棒タイプ)の取り付けは
①側板取付ベースの位置(側板内側)を決め取り付け
②扉を90°(全開)開き、ストッパナットをアームガイドへ押し当てた状態で扉取付ベースの位置(扉内側)を決め取り付け
の手順になります。
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能ですが、前述の前蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様に、扉全開時扉・側板に対して45°の角度になる様に取り付けるのが基本となります。
側板取付ベースの前後方向の取り付け位置は、扉取付ベースをアームガイドに突き当てた状態で決めていきます。
扉取付ベースをアームガイドに突き当てた状態で、扉取付ベースが側板木端面と面になる様に側板取付ベースの取付位置を決めます。
側板取付ベースの上下方向の取り付け位置は、アームガイド中央から扉取付ベースの鋲までの寸法Aと扉取付ベースの鋲から扉接地面までの寸法Bを元に決めます。
前述の前蓋用ステー(折り畳みタイプ)と同様に三平方の定理を使用し側板取付ベースの取付高さ (A÷√2)+ B を求めます。
側板取付ベースの取付位置が決まったら、位置がずれない様にビスの位置に千枚通しで印をつけ、ビス止め・固定します。
側板取付ベースを固定したら扉を全開(90°開)させ、ストッパナットをアームガイドへ押し当てた状態で、扉取付ベースを扉に押し当てていきます。
取付ベースを扉に押し当てたら、側板とステーを平行を確認・調整し、ビスの位置に千枚通しで印を付け、ビス止め・固定します。
扉の開閉に不具合(扉全開時90°扉が保持されるか、ステーの動きに不具合が無いか、確実に扉を閉じる事が出来るか等)が無いか確認したら、前蓋用ステー(丸棒タイプ)の取り付け完了です。
取付位置の注意点
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は、前述の前蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能ですが、取付位置によっては扉の開閉が不可能になったり扉を支える強度が弱まってしまう場合があり、注意が必要です。
側板取付ベースの取付位置を極端に高くしたり極端に側板の内側にすると、扉取付ベースが丁番寄りになり、扉を支える強度が弱まってしまう可能性があります。
側板取付ベースの取付位置を極端に低くすると、ステーの角度が小さくなる為扉を支える強度が弱まったり、扉の閉時にアームが地板に干渉して閉まらなくなる可能性があります。
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は、アームの長さに注意が必要です。
扉閉時は、折り畳みタイプと違いアーム全長がすべて箱本体内側に収納されます。
箱本体の高さと奥行が、使用する前蓋用ステー(丸棒タイプ)の取付に適した寸法であるのか、確認しておく事が必要です。
前蓋用ステー(丸棒タイプ)は45°の角度に取り付けるのが基本ですが、多少取付ベースがずれ45°の角度に取り付けられなくても扉の開閉と扉開時の保持機能を正常に機能させることが出来ます。
しかし、側板取付ベースを極端な位置に取り付けると扉の開閉が出来なかったり、扉を支える強度が弱まってしまったりしてしまいます。
ステーのアーム長さが取り付ける箱本体の大きさに適していないと、アームが箱本体に干渉して扉が閉まらなくなる場合もあります。
側板取付ベース取付位置の前後・上下方向の許容範囲及びアームの長さが取り付ける箱本体の大きさに適しているか、注意・確認してステーを取り付ける必要があります。
ソフトダウンステー(機能付きステー)
下開きステーには、開いた扉を自由な位置で保持する機能やゆっくりと扉を開く機能などを持ち合わせた ”機能付きステー” がありますが、その中からライティングテーブルなどに適したスガツネ製の ”ソフトダウンステー” について説明します。
ソフトダウンステーは、扉をある程度手動で開くと、後は自動にゆっくりと90°まで開いていきます。(ソフトダウン機能)
扉を閉じる場合は手動になりますが、扉を閉じた状態を保持する ”キャッチ機能” が有り無しの2タイプがあります。
ソフトダウンステーは左右兼用で、両側どちらの側板にも取り付け可能です。
取り付け方法
メーカーの仕様書に従って、マウンティングプレート・アーム取付座を、それぞれ側板内側・扉内側の所定の位置にビス止め・固定します。
マウンティングプレートの取付高さ寸法①とアーム取付座の取付位置寸法②は、扉に使用している丁番の種類によって指定されています。
扉取付部をアーム取付座にはめ込み、ステーを90°回転させ、側板取付部が箱本体の反対側に来るようにします。
側板取付部を箱本体側(マウンティングプレート側)に起こしていきます。
側板内側まで起したら、マウンティングプレートのでっばりに側板取付部中央の穴をはめ込みます。
付属のネジを締め込み、側板取付部を固定したらソフトダウンステーの取り付け完了です。
ソフトダウンステーは扉を閉じていくとアーム部分が二つに折り畳まれていきますが、扉が全開(90°開)の場合はアーム部分が真っすぐ一直線でなければなりません。
扉の全開時、アーム部分が少しでも折れ曲がっている場合は、調整ネジを回して真っすぐになる様に調整します。
下開き(前蓋)用ステーと共に用いられる丁番と金物
下開き(前蓋)用ステーと共に用いられる丁番は、平丁番・ドロップ丁番・長丁番になります。
各丁番の取り付け方等は、以下の記事を参照してください。
今回紹介した前蓋用ステー(折り畳みタイプ・丸棒タイプ)は扉を閉じた時、閉じた状態を保持する機能(キャッチ機能)がありません。
保持機能が無い前開き用ステーを使用する場合には、マグネットキャッチなどの金物を取り付ける必要があります。
まとめ
今回は、下開き(前蓋)用ステーの種類と取り付け方法について説明しました。
ステーは扉の開閉の仕方により使用できる種類が分かれており、使用箇所に適したステーを選ぶ必要があります。
適したステーを選んでも、扉の重さや取り付け位置によっては、扉の開閉が不可能になったり保持能力が低下する場合があります。
今回紹介した取り付け方法等を参考にしてみてくださいね。
その他の種類のステーは、ステーの種類と使い方、取り付け方法とは?まとめ の記事を参照してください。