隠し丁番の使い方と取り付け方法とは?

家具や建具などの扉には、開閉動作を担う ”丁番” が取り付けられています。

丁番には、様々な種類があり、それぞれに特徴があります。

今回は、扉の閉時に丁番が見えなくなる、”隠し丁番” の使い方と取り付け方法について説明していきます。

目次

隠し丁番とは?

掘り込み・ネジ止めタイプ

隠し丁番・掘り込みネジ止めタイプ

円筒タイプ

隠し丁番・円筒タイプ

隠し丁番を取り付けた扉を開いた状態

隠し丁番を取り付けた扉を開いた状態

扉閉時に丁番が隠れる

扉閉時に丁番が隠れる

”隠し丁番” は、扉や折れ戸に使用され、その名の通り、扉の閉時に外側から見えなくなる丁番です。

掘り込み加工を施しネジ止めするタイプや、下穴をあけ取り付ける円筒タイプがあります。

 

スライド丁番の出っ張り(扉開時)

スライド丁番の出っ張り(扉開時)

隠し丁番は出っ張りがない

隠し丁番は出っ張りがない

扉の閉時に丁番が外側から見えないタイプには、スライド丁番があります。

スライド丁番は取付枠の内側に出っ張ってしまう為、収納スペースが狭くなったり、内容物が丁番に干渉してしまったりします。

隠し丁番は、掘り込み加工を施し取り付けるので収納スペースに影響を及ぼすことがありません。

 

かぶせ扉(アウトセット扉)

かぶせ扉(アウトセット扉)

インセット扉

インセット扉

折れ戸

折れ戸

隠し丁番は、取付位置によって、扉(かぶせ扉、インセット扉など)折れ戸などの丁番として使用されます。

 

隠し丁番の取り付け方法

トリマーによる掘り込み加工を行う取り付け方法

扉内側・取付枠側板木端面に掘り込み加工を施す

扉内側・取付枠側板木端面に掘り込み加工を施す

隠し丁番をネジ止め・固定

隠し丁番をネジ止め・固定

トリマーによる掘り込み加工を施し、扉の開閉部分に隠し丁番を取り付ける方法を説明します。

扉の内側と取付枠側の木端面に掘り込み加工を施し、ネジ止めして取り付けます。

トリマーに関して詳しくは、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。

 

隠し丁番・開状態

隠し丁番・開状態

隠し丁番・閉じる途中

隠し丁番・閉じる途中

隠し丁番・閉時

隠し丁番・閉時

今回使用する隠し丁番は、閉時にアームを収納する為の出っ張りがある形状になります。

 

隠し丁番・開状態・掘り込み深さ

隠し丁番・開状態・掘り込み深さ

階段状に掘り込む

階段状に掘り込む

掘り込み加工には、丁番をネジ止めする部分の厚みのみを掘り込む箇所(一層目)と、出っ張り部分の厚み分をプラスして掘り込む箇所(二層目)があることになり、階段状に切削します。

 

掘り込み部分の切削長さ

掘り込み部分の切削長さ

扉内側と側板木端面に墨付け

扉内側と側板木端面に墨付け

隠し丁番の長さ(掘り込み部分の長さ寸法)を扉内側と側板木端面に墨付けします。

 

掘り込み部分の切削幅

掘り込み部分の切削幅

トリマーに切削幅のストレートビット・ストレートガイドを装着

トリマーに切削幅のストレートビット・ストレートガイドを装着

トリマーに隠し丁番の幅(掘り込み部分の切削幅)に合うストレートビット、ストレートガイドを装着します。

 

丁番内側と扉端・側板端までは指定寸法以下にする

丁番内側と扉端・側板端までは指定寸法以下にする

ストレートガイドとビットとの間隔を指定寸法以下にセット

ストレートガイドとビットとの間隔を指定寸法以下にセット

隠し丁番の左右方向の取り付け位置は、丁番が開状態の時に左右の丁番の内側になる部分の寸法によって決まります。

丁番の内側の寸法(丁番端から扉端までの寸法・丁番端から側板端までの寸法)は、指定された寸法以下にする必要があります。

指定寸法以上にしてしまうと、扉と側板が干渉して開き切らなくなります。

トリマーのストレートガイドとビット内側の間隔を指定寸法以下にセットします。

 

一層目の切削長さ

一層目の切削長さ

一層目の切削深さ

一層目の切削深さ

墨付けした丁番の長さを、一層目(丁番をネジ止めする部分の厚み)の深さまで切削していきます。

トリマーの掘り込み箇所は丁番の取り付け部分のみになる為、切削始めと終わりのトリマー操作にはやり方があります。

 

基準面(側板側面)にストレートガイドを押し当てる

基準面(側板側面)にストレートガイドを押し当てる

トリマーベースの角を支点に本体を立てていく

トリマーベースの角を支点に本体を立てていく

切削を始めるには、トリマーのスイッチ入れ、トリマービットが部材に触れないように本体を手前に傾けながらストレートガイドを部材の側面(基準面=取付枠側板側面、扉木端面)に沿わせます。

トリマーベースの角を部材に当て支点として、徐々にトリマー本体を立てていきます。

 

トリマーが立ち上がった時のビットの位置

トリマーが立ち上がった時のビットの位置

トリマーの位置を調整する

トリマーの位置を調整する

前方へ切削

前方へ切削

完全にトリマーが立ち上がった時に、ビット(切削位置)が墨線に合うように、トリマーの位置を調整しながら立ち上げていきます。

ベース面が部材に密着し、完全にトリマーが立ち上がったら、前方向へ切削していきます。

 

墨線際まで切削

墨線際まで切削

そのままトリマーを後退させる

そのままトリマーを後退させる

ベース角を支点にトリマーを手前に傾ける

ベース角を支点にトリマーを手前に傾ける

掘り込み箇所の端部(墨線際)まで切削したら、そのままの状態でトリマーを少し後退させます。

ベースの角を支点にしてトリマーを手前に傾け、ビットを溝底から上げていきますが、ビットの先端が掘り込み箇所前方の端部に触れないか確認し、触れそうだったらトリマーを後退させて支点を後方にさげます。

ビットが溝から離れたらそのままトリマーを退けてスイッチを切ります。

 

ノギスで深さを確認する

ノギスで深さを確認する

取付枠側板に一層目の掘り込み完了

取付枠側板に一層目の掘り込み完了

扉内側に一層目の掘り込み完了

扉内側に一層目の掘り込み完了

ノギスで深さを確認しながら、取付枠側板・扉内側に一層目の深さまで何回かに分け切削します。

 

出っ張り部分の切削長さと深さ

出っ張り部分の切削長さと深さ

出っ張り部分の掘り込み箇所

出っ張り部分の掘り込み箇所

二層目(丁番の出っ張り部分)を切削していきます。

一層目と同じ加工方法(ストレートガイドの設定は変えず、ビットの出を調整する)で、出っ張り部分の長さ・深さまで何回かに分けて(ノギスで深さを確認)切削します。

 

取付枠側板に二層目の掘り込み完了

取付枠側板に二層目の掘り込み完了

扉内側に二層目の掘り込み完了

扉内側に二層目の掘り込み完了

取付枠側板木端面と扉内側に二層目までの掘り込み加工が完了です。

 

扉内側に丁番をネジ止め

扉内側に丁番をネジ止め

取付枠側板木端面に丁番をネジ止め

取付枠側板木端面に丁番をネジ止め

隠し丁番の取り付け完了

隠し丁番の取り付け完了

隠し丁番を掘り込み箇所にはめ込み、ネジ止め固定したら取り付け完了です。

 

扉・取付枠を上から見た写真

扉・取付枠を上から見た写真

90°以上の開き

90°以上の開き

全開(180°の開き)

全開(180°の開き)

フラップ扉

フラップ扉

今回の隠し丁番の取り付け方法(取付枠側板木端面と扉内側板面に取り付け)の場合、扉は180°まで開くことが出来ます。

扉の開閉方向を上下に変えると、フラップ扉の丁番として使用する事が出来ます。

 

扉木端面と取付枠側板内側に取り付け

扉木端面と取付枠側板内側に取り付け

インセット扉

インセット扉

扉・取付枠を上から見た写真

扉・取付枠を上から見た写真

全開(180°の開き)

全開(180°の開き)

隠し丁番は取付箇所を変えることによって、色々な使用方法が出来ます。

扉の木端面と取付枠側板内側に隠し丁番を取り付けると、インセット扉になります。

(インセット扉に取り付ける場合も、扉は180°まで開くことが出来ます)

 

部材の木端面に取り付け

部材の木端面に取り付け

扉開時

扉開時

90°の開き

90°の開き

全閉(180°の可動域)

全閉(180°の可動域)

部材の木端面同士に隠し丁番を取り付けると、折れ戸になります。

(折れ戸の場合も、扉の可動域は180°になります)

 

円筒タイプの取り付け方法

ドリルで下穴をあける

ドリルで下穴をあける

円筒タイプの隠し丁番をはめ込む

円筒タイプの隠し丁番をはめ込む

円筒タイプの隠し丁番は、取付箇所にドリルで穴をあけ、はめ込んで取り付けます。

今回は、部材の木端面同士に取り付ける方法を説明します。

 

円筒上部のネジ

円筒上部のネジ

端部(円筒の底部分)が広がる

端部(円筒の底部分)が広がる

円筒タイプの隠し丁番は、上部のネジを締め付けると、端部(円筒の底部分)が広がる構造になっています。

丁番を下穴にはめ込んだ後に上部のネジを締め付け、端部の広がりによって穴の中で固定される仕組みです。

 

丁番内側と部材端部間は指定寸法以下にする

丁番内側と部材端部間は指定寸法以下にする

下穴の中心を墨付けする

下穴の中心を墨付けする

前述の掘り込みネジ止めタイプと同様に、丁番の内側の寸法(丁番端から部材端部間の寸法)は、指定された寸法以下にする必要があります。

丁番端と部材端部間の寸法を考慮して、部材の木端面に下穴の中心を墨付けします。

 

下穴の深さ(円筒の長さ寸法)に印をつける

下穴の深さ(円筒の長さ寸法)に印をつける

下穴をあける

下穴をあける

円筒の長さの深さに下穴をあける

円筒の長さの深さに下穴をあける

円筒の直径と同じ径のボアビットを用意し、下穴の深さ(円筒の長さ)の位置にマスキングテープで印をつけておきます。

墨位置にビットのセンターを合わせ、印の位置まで穴あけします。

 

穴あけ完了

穴あけ完了

丁番をはめ込む

丁番をはめ込む

すべての穴あけが完了したら、丁番をはめ込んでいきます。

 

ネジを閉め、丁番を固定する

ネジを閉め、丁番を固定する

円筒タイプの隠し丁番の取り付け完了

円筒タイプの隠し丁番の取り付け完了

円筒上部のネジを締め、丁番を固定します。

 

扉開時

扉開時

90°の開き

90°の開き

180°の可動域

180°の可動域

円筒タイプの隠し丁番も掘り込みネジ止めタイプ同様、取り付け箇所を変えることで、扉(かぶせ扉、インセット扉、フラップ扉)や折れ戸に使用できます。

いずれも180°の可動域があります。

ただし、円筒タイプは固定の仕組み上(固定強度が弱い)、比較的軽量の扉に使用する事になります。

まとめ

今回は、”隠し丁番” の使い方と取り付け方法について説明しました。

隠し丁番は、扉の閉時に完全に見えなくなるので、家具や建具の外観をスッキリ見せることが出来ます。

ただし、取り付け位置がずれると扉の開閉に不具合を起こしてしまうので、正確な掘り込みや穴あけ加工が必要になります。

今回紹介したトリマーの加工法等を参考にしてみてくださいね。

その他の種類の丁番に関しては、蝶番(丁番)の種類と使い方、取り付け方法とは?まとめ の記事を参照してください。

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