家具や建具には、扉や蓋などが取り付けられている場合があります。
扉や蓋などの開閉機能を担う金物には丁番が使われますが、扉や蓋の開いた状態を保持する為には、 ”ステー(stay)” と呼ばれる金物が一緒に用いられます。
ステー(stay)は主に上下方向に開閉する扉・蓋に使用されますが、扉・蓋の開閉の仕方は様々で、下開き(前蓋・まえぶた)・上開き・上蓋(うわぶた)があり、それぞれの開き方に合わせて専用のステーがあります。
今回は、上蓋用ステーの種類と取り付け方法について説明していきます。
上蓋用ステーとは?
上蓋用ステーとは、ドレッサーや収納ケースなどで丁番が取り付けられている上蓋に使用され、上蓋が開いた状態を保持するステーになります。
上蓋用ステーには、天蓋用ステー(折り畳みタイプ)・ワンタッチステー・機能付きステー(ソフトダウンステーなど)があり、ステーの両端部をそれぞれ上蓋内側と側板内側に取り付けて使用します。
上蓋用ステーの種類別取り付け方法
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、ステー中央部の鋲を支点に、側板取付側アームと天蓋取付側アームが開閉する構造になっています。
(今回使用している天蓋用ステーは最大180°まで開きます)
側板の内側と上蓋内側にビス止め・固定して使用しますが、右の側板に取り付ける右用と、左の側板に取り付ける左用があります。
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、上蓋が閉じている時、取付ベースより前側にアームが折り畳まれています。
上蓋を開いていくと中央の鋲を支点に側板取付側アームと天蓋取付側アームが徐々に開いていきます。
ステーのアームが180°開くとそれ以上開かないロック状態になり、上蓋が開いた状態を保持してくれます。
上蓋を閉じる時は、中央の鋲(軸部分)を手前に押し込み、ロック状態を解除してから閉じていきます。
取り付け方法
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、側板取付ベースと天蓋取付ベースを色々な位置に取り付ける事が可能ですが、その取付位置によって上蓋の開き角度が変わります。
今回は、上蓋を閉じた時に天蓋ステーが全閉となり、天蓋取付ベースの鋲(軸)のセンターと側板取付ベースの鋲(軸)のセンターが垂直に揃う様に取り付ける方法を紹介します。
側板取付ベースの上下方向の取付位置(側板上端からの距離)は、ステーを全閉にし天蓋取付ベースと側板上端を面(つら)にした状態で決めます。
側板取付ベースの前後方向の取り付け位置は、上蓋の開き角度をどの程度に設定するかによって変わってきます。
側板取付ベースを背板方向(丁番側)へ近づけると、上蓋の開き角度が大きくなり、前板方向に近づけると、上蓋の開き角度が小さくなります。
今回は上蓋の開き角度を標準的な60°程度とし、ステーの全長を目安にして側板取付ベース・前後方向の取り付け位置をおおよその位置とします。
※三角形Aを正三角形とみなし、ステーの全長からおおよその取り付け位置(寸法B=背板・側板取付ベース間寸法)を割り出します。
側板取付ベースの取付位置が決まったら、ビス止め・固定します。
側板取付ベースを固定したら、上蓋を開き、天蓋取付ベースの位置を墨付けします。
上蓋の際・天蓋取付ベース間寸法は、背板・側板取付ベース間寸法Bと同寸となります。
実際にステーを全開(ロック状態)状態で、天蓋取付ベースが突き当たるまで上蓋を閉じ、墨線の垂直上に天蓋取付ベースの鋲(軸)のセンターがきちんと位置するように調整・確認します。
※後述の天蓋取付ベースの鋲のセンターが墨線より丁番寄りになっていると上蓋が閉まらなくなります。詳しくは、後述の取り付け位置の注意点の項目で説明します。
ステーの全開状態を保ったまま上蓋に突き当てた状態(墨線に合っている)で、側板とステーを平行にし、ビス止め・固定します。
上蓋の開閉に不具合が無いが確認したら、天蓋用ステー(折り畳みタイプ)の取り付け完了です。
取付位置の注意点
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能ですが、取付位置によっては上蓋の開閉が不可能になったり、上蓋の開きを保持する力が弱まってしまう場合があり、注意が必要です。
今回紹介した取付方法の様に側板取付ベースの上下方向の位置を一定にする場合は、側板取付ベースを背板(丁番)側に近づけていくと上蓋の開き角度が大きくなり、前板側に近づけていくと開き角度が小さくなります。
ただし、極端に背板(丁番)側に近づけ過ぎると、上蓋が90°以上開いてしまい、ステーが全開にならず上蓋を支えられなかったり、ステーがしっかりロックせず上蓋の保持が不安定になってしまいます。
逆に前板側に極端に近づけ過ぎると、上蓋の開き角度が小さくなりすぎ、内容物の取り出し・収納がやりずらくなってしまい、ステーの意味が無くなってしまいます。
従って側板取付ベースを極端に背板・前板に近づけず、ステーの機能をしっかり発揮できる今回紹介した取り付け方法(上蓋の開き角度を60°程度にする)を推奨します。
今回紹介した取付方法では、側板取付ベースの上下方向の取付位置を最大限上方にしていますが、取付位置を多少下げても上蓋の開閉等に不具合なく使用する事が可能です。
ただし、極端に取付位置を下げてしまうと、上蓋の開き角度が小さくなりすぎ、内容物の取り出し・収納がやりずらくなってしまうので注意してください。
今回紹介した取付方法では、上蓋全閉時に側板取付ベースの鋲(軸)と天蓋取付ベースの鋲(軸)を垂直に揃うようにステーを固定しましたが、鋲(軸)同士を垂直に揃えないずらした取付には注意が必要です。
天蓋取付ベースの鋲を前板方向へずらした場合、ずらし幅が大きくなるにつれ上蓋の開き角度が小さくなっていきます。
天蓋取付ベースの鋲を極端に前板方向にずらして取り付けると、上蓋の開き角度が小さくなるばかりでなく、ステーのロック機能の動作(ロックがかかりにくい等)にも影響するので、天蓋取付ベースの鋲と側板取付ベースの鋲をなるべく揃えて取り付けることを推奨します。
天蓋取付ベースの鋲を前板方向へずらして取り付ける事は可能ですが、逆に背板方向へずらして取り付ける事はしないようにします。
取り付け時上蓋が開いた状態では、天蓋取付ベースの鋲を背板方向へずらして取り付ける事が出来ますが、上蓋を閉じていくとアームが上蓋に干渉して、完全に閉じる事が出来ません。
必ず上蓋閉じた状態で側板取付ベースの鋲のセンターより前板側に天蓋取付ベースの鋲が位置するように取り付けます。
天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、上蓋の開き角度を60°程度になる様に取り付けるのが基本ですが、今回紹介した取付方法に従った位置に側板・天蓋取付ベースを固定しなくても、上蓋の開閉と上蓋開時の保持機能を正常に機能させることは可能です。
しかし、側板・天蓋取付ベースを極端な位置に取り付けると上蓋の開閉が出来なかったり、上蓋を支えるロック・保持機能が作用しなくなる場合がある為、側板・上蓋取付ベース取付位置の前後・上下方向の許容範囲に注意してステーを取り付ける必要があります。
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)は、前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様にステー中央部の鋲を支点として、側板取付側アームと上蓋取付側アームが開閉する構造になっています。
今回使用しているワンタッチステーは最大160°まで開きますが、ステー中央部にキャッチ機能が付属しており、ステーの全開状態を保持(固定)することが出来ます。
側板の内側と上蓋内側にビス止め・固定して使用しますが、右の側板に取り付ける右用と、左の側板に取り付ける左用があります。
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)は、上蓋が閉じている時、取付ベースより前板側にアームが折り畳まれています。
上蓋を開いていくと中央の鋲を支点に側板取付側アームと上蓋取付側アームが徐々に開いていきます。
ステーのアームが160°開くとそれ以上開かないロック状態になり、上蓋が開いた状態を保持してくれます。
前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)は、ステーの中心鋲(軸)にA方向から力がかかり押し込めない事によって上蓋を保持し、B方向を押し込むとロック状態を解除できます。
(B方向からは、ほとんど力をかけることなく中央鋲を押し込む事が出来ます)
一方ワンタッチステー(キャッチ機能付き)の場合は、ステーが全開状態になるとキャッチ機能部がロックされ、A´・B´両方向から押し込む事が出来ないことにより上蓋を保持します。
上蓋は多少力を入れて押し下げると、ロックが解除され、閉じる事が出来ます。
上蓋をある程度閉じていくと、キャッチ機能により閉じる方向へ力が働き、上蓋が閉じた状態を保持します。
取り付け方法
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)の取り付け方法は、前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様、上蓋を閉じた時にワンタッチステーが全閉となり、上蓋取付ベースの鋲(軸)のセンターと側板取付ベースの鋲(軸)のセンターが垂直に揃う様にする方法を紹介します。
側板取付ベースの上下方向の取付位置(側板上端からの距離)は、ステーを全閉にし上蓋取付ベースと側板上端を面(つら)にした状態で決め、前後方向の取付位置は、背板から取付位置までの寸法をステーの全長(鋲間寸法)程度とします。
(前述の天蓋用ステーと同様に、側板取付ベースを背板へ近づけると、上蓋の開き角度が大きくなり、前板に近づけると、上蓋の開き角度が小さくなります。今回の取り付け方法による上蓋の開き角度を変更したい場合は、側板取付ベースの前後方向の取付位置を調整してください。)
側板取付ベースを側板内側にビス止め・固定します。
側板取付ベースを固定したら、上蓋を開き、上蓋取付ベースの位置(背板・側板取付ベース間寸法と同寸)を墨付けします。
実際にステーを全開(ロック状態)状態で、上蓋取付ベースが突き当たるまで上蓋を閉じ、墨線の垂直上に上蓋取付ベースの鋲(軸)のセンターが位置するように調整します。
※前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様に、上蓋取付ベースの鋲のセンターが墨線より丁番寄りになっていると上蓋が閉まらなくなります。上蓋取付ベースの鋲のセンターは必ず墨線上もしくは墨線よりAの方向に来るように取り付けます。
ステーの全開状態を保ったまま上蓋に上蓋取付ベースを突き当てた状態(墨線に合っている)で、側板とステーを平行にし、ビス止め・固定します。
上蓋の開閉に不具合が無いが確認したら、ワンタッチステー(キャッチ機能付き)の取り付け完了です。
取付位置の注意点
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)は、前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)同様、側板取付ベースの位置によってさまざまな角度・位置に取り付けることが可能です。
側板取付ベースの位置によっては上蓋の開閉が不可能になったり、上蓋の開き角度が小さくなりすぎたりするため、注意が必要です。
前述の天蓋用ステー(折り畳みタイプ)と同様に、ワンタッチステー(キャッチ機能付き)においても側板取付ベースの上下方向の位置を一定にする場合は、側板取付ベースを背板側に近づけていくと上蓋の開き角度が大きくなり、前板側に近づけていくと開き角度が小さくなります。
極端に背板側に近づけ過ぎると、ステーが全開にならず上蓋が開いた状態を保持できない場合があります。
しかし、天蓋用ステー(折り畳みタイプ)と違い、ワンタッチステー(キャッチ機能付き)はステー自体が全開するとキャッチ機能部がしっかりロックする為、扉が90°以上開いても上蓋を保持する事が出来ます。
前板側に極端に近づけ過ぎると、上蓋の開き角度が小さくなりすぎ、内容物の取り出し・収納がやりずらくなってしまいます。
上蓋取付ベースは、側板取付ベース鋲・センター位置より背板方向へずらして取り付ける事はしないようにします。
背板方向にずれて取り付けると、上蓋の閉時にステーが干渉して完全に閉じる事が出来なくなってしまいます。
必ず上蓋閉じた状態で側板取付ベース鋲・センターより前板側に上蓋取付ベース・鋲センターが位置するように取り付けます。
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)は、ステーの全開・全閉時にキャッチ機能が働き、ステーがロックされます。
上蓋が閉じている場合、ステーは全閉でロック状態(多少の遊びはあります)である為、側板取付ベースの下方向・上蓋取付ベースの前板方向への取付範囲は狭い範囲に限定されます。
ワンタッチステー(キャッチ機能付き)は、ステーのロックにより上蓋が90°以上開く使用も出来ますが、側板取付ベースの取付許容範囲(極端に背板・前板に近づけない)・上蓋取付ベースの取付位置に注意し、実際の使用に適した扉の開き角度になる様に取り付ける必要があります。
ソフトダウンステー(機能付きステー)
上蓋用ステーには、開いた扉を自由な位置で保持する機能やゆっくりと扉を閉じる機能などを持ち合わせた ”機能付きステー” がありますが、その中からドレッサーなどに適したスガツネ製の ”ソフトダウンステー” について説明します。
今回使用するソフトダウンステーは、上蓋の開き角度が70°に設定されていて、70°まで開く(手動で開く)とその位置を保持する ”キャッチ機能” がついています。
上蓋の全開位置(70°開)からある程度手動で閉じると、後は自動でゆっくりと閉じていきます。(ソフトダウン機能)
ソフトダウンステーは左右兼用で、両側どちらの側板にも取り付け可能です。
取り付け方法
メーカーの仕様書に従って、マウンティングプレート・アーム取付座を、それぞれ側板内側・上蓋内側の所定の位置にビス止め・固定します。
(マウンティングプレート中央の取付軸の上下位置寸法①と前後位置寸法②、アーム取付座中央の前後位置寸法③と左右位置寸法④が指定されており、その寸法に従って取り付けます)
本体アームとアーム取付座が垂直になる様にして、上蓋取付部をアーム取付座にはめ込みます。
上蓋取付部をはめ込んだら、ステー本体をマウンティングプレート側へ90°回転させます。
(側板取付部がマウンティングプレート側へ来るようにします)
上蓋を起こしながら、側板取付部中央の穴をマウンティングプレートの取付軸にはめ込みます。
付属のネジを締め込み、側板取付部を固定したらソフトダウンステーの取り付け完了です。
ソフトダウンステーは上蓋を閉じていくとアーム部分が二つに折り畳まれていきますが、ソフトダウンステー取り付け時(上蓋が最大に開いている状態)はアーム部分が真っすぐ一直線でなければなりません。
アーム部分が少しでも折れ曲がっている場合は、調整ネジを回して真っすぐになる様に調整します。
上蓋用ステーと共に用いられる丁番
各丁番の取り付け方等は、以下の記事を参照してください。
まとめ
今回は、上蓋用ステーの種類と取り付け方法について説明しました。
上蓋には必ずと言っていいほど、ステーが取り付けられますが、ステーを正常に機能させる為には取付位置が重要になります。
極端な位置にステーを取り付けると、上蓋の開閉に不具合が生じたり、扉の保持力が低下する場合があります。
使用に適した上蓋の開き角度になる様に、今回紹介した取り付け方法を参考にしてみてくださいね。
その他の種類のステーに関しては、ステーの種類と使い方、取り付け方法とは?まとめ の記事を参照してください。