チェストなどの箱物家具の背面には、背板(せいた)と呼ばれる部材が取り付けられます。
※背板は、裏板(うらいた)と呼ばれる場合もあります。
”背板” は、箱物家具のフレーム部(天板・地板・側板)の端部に取り付けられますが、そのやり方には様々な方法があります。
今回はその中から多く用いられる ”背板の取り付け方法” について説明していきます。
背板の役割と取り付け方法の種類

家具背面の背板(裏板)

正面から見た背板
”背板”(裏板とも呼ばれる)は箱物家具の背面を覆う部材で、家具の密閉を保ち、構造(箱形状のフレーム部)のゆがみ防止と強度を高める役割を担っています。

背板断面図(段欠き)

段欠きによる背板の収まり(断面図)

背板断面図(溝切削)

溝切削による背板の収まり(断面図)
背板の取り付け方法は、天板・側板・地板の木端面に段欠き加工を施し背板をビス止め・釘打ちで固定する方法と、天板・側板・地板に溝をほり背板をはめ込む方法が多く用いられます。
両方の取り付け方法も、使用する背板の板厚(5.5mm厚の合板を用いることが多い)に合わせた段欠き・溝切削をすることで、家具の横から背板が見えず、スッキリした仕上がりにする事が出来ます。

背板(厚板)をフレーム部の内側に取り付け

家具の強度を強める背板の収まり
家具の強度を強める必要がある場合や、吊戸のように壁に固定する場合などは、背板の厚みを厚くし、箱状のフレーム部の内側(天板・側板・地板の内側)に取り付けます。
段欠き加工による背板の取り付け方法

天板・側板・地板の木端面に段欠き加工を施す

木端面内側に段欠きを施す

背板をはめ込む

背板をビスや釘で固定
段欠き加工による背板の取り付けは、天板・側板・地板の木端面(内側)に段欠きを施して、背板をはめ込み、ビスや釘で固定する方法になります。

天板・地板で側板を挟む構造の箱物家具

天板・地板と側板の位置関係詳細
今回は、天板と地板に側板が挟まれる構造の箱物家具に、段欠きをして背板を取り付ける方法を説明します。
段欠きの加工範囲と寸法

天板・地板と側板の段欠き範囲の違い

天板・地板は段欠きの端部を残す
背板の段欠き加工は、箱物家具のフレーム部(天板・側板・地板)の接合がどのような構造になっているかによって、切削範囲に違いがあります。
今回説明する ”天板と地板に側板が挟まれる構造の箱物家具 ”の場合、側板は端から端まで段欠きを通しますが、天板・地板は端まで通すと外側に段欠きが露出して見えてしまいます。
天板・地板の段欠きは途中で止め、端部を残すようにします。

段欠き幅=背板厚

段欠きの深さ=加工部材厚の1/2~1/3程度
段欠きの寸法は、部材の家具内側になる面を上向きにした場合、幅が取り付ける背板の厚みと同寸、深さが加工部材厚の1/2~1/3程度になります。
トリマー(ストレートガイドを装着)による段欠き加工

ストレートビットを装着(背板板厚以上の径)

ストレートガイドを装着
トリマーを使用し、段欠き加工をしていきます。
トリマーには、ストレートビット(背板の板厚以上の径のビット)・ストレートガイドを装着します。
トリマーについて(ストレートガイドの使用方法等)詳しくは、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。


部材木端面にストレートガイドを当てる

ストレートガイドをトリマーベース面から段欠き深さ寸法+α下げた位置にする
段欠きは、部材の内側を上に向けトリマーベースを乗せ、木端面にストレートガイドを当てて切削します。
ストレートビットとの干渉を避けるため、ストレートガイドの上端をトリマーベースから「段欠きの深さ寸法+α」下げた位置になる様に取り付ける必要があります。

ストレートガイドの位置を調整・固定する

ビットとガイドの干渉を避ける
ストレートガイドの位置を調整(トリマーベースから「段欠きの深さ寸法+α」下げた位置)して、ビットと干渉しない様に固定します。

ストレートガイドとビット外寸間を背板の厚みにセット
ストレートガイドとビット外寸間を、背板の厚み寸法にセットします。

天板・地板切削範囲の墨付け位置

切削範囲を墨付け
天板・地板に端部を残す段欠き加工をしていきます。
切削範囲を天板・地板の内側・端部に墨付けします。

天板・地板木端面にトリマーを寄せていく

ストレートビットの移動方向
スイッチを入れトリマーを始動したら、ビットの位置が段欠き始めの墨線に合うように調整しながら、木端面の横側からトリマーを徐々に寄せていきます。
ビットは右から左に移動し、木端面から横方向に切削が始まります。

ストレートガイドを木端面に密着させる

前方向へ切削していく
ストレートガイドが木端面に当たるまで、横方向に切削していきます。
ストレートガイドを木端面に密着させたら、前方向へ切削していきます。

トリマーを横にずらす

切削終わりのストレートビットの移動方向
反対側の墨線際まで切削したら、トリマーを横方向(右手)へずらしビットを切削箇所から外した後、スイッチを切ります。

側板に段欠き加工する

側板木端面に段欠き(1回目)
天板・地板に1回目の切削が出来たら、トリマーの設定(ストレートビットの切削深さ・ストレートガイドの位置)を変えずに側板に段欠き加工(1回目)をします。
側板木端面にストレートガイドを押し当て、端から端まで通して切削します。
トリマーによる切削は、1回あたり最大深さが3mm程度になります。
段欠きを完成させるには、何回かに分けて徐々に深く切削していきますが、ビットの設定(出寸法)を変えたらそのたびに全ての部材(天板・地板・側板)を切削します。

天板・地板の端部をノミで仕上げる

天板・地板の段欠き端部を整える
すべての部材に所定の深さまで段欠きを施したら、天板・地板の端部を墨線にそってノミで四角に整えます。

背板をはめ込む

釘で背板を固定

背板の収まり

段欠き加工による背板の取り付け
天板・地板・側板のフレーム部を組み立て、背板を段欠き部分にはめ込みます。
釘やビスで背板を固定して取り付け完了です。
溝切削・はめ込みによる背板の取り付け方法

天板・側板・地板の内側に溝を切削する

内側に溝を切削する

背板をはめ込む

天板をはめ込み固定
溝切削・はめ込みによる背板の取り付けは、天板・側板・地板の内側端部(家具背面側)に溝切削を施し、背板をはめ込む方法になります。
今回は前述の段欠き加工と同様に、天板と地板に側板が挟まれる構造の箱物家具へ溝切削をし、背板を取り付ける方法を説明します。
溝切削の加工範囲と寸法

天板・地板と側板の溝切削範囲の違い

天板・地板の溝の端部を残す
今回説明する ”天板と地板に側板が挟まれる構造の箱物家具 ”の場合、側板は端から端まで溝を通しますが、天板・地板は端まで通すと外側に溝が露出して見えてしまいます。
天板・地板の溝は途中で止め、両端部を残すようにします。

溝幅=背板の厚み

溝深さ=部材板厚の1/3程度
溝の寸法は、幅がはめ込む背板の厚みと同寸、深さが加工部材厚の1/3程度になります。
トリマー(ストレートガイドを装着)による溝切削

ストレートビット(刃径・6mm)

ストレートガイドを装着する
トリマーを使用し、溝切削をしていきます。
トリマーには、ストレートビット(刃径・6mm)・ストレートガイドを装着します。
(はめ込む背板は、5.5mm厚の合板を使用する場合が多く、今回使用する背板も5.5mm厚シナ合板になります。溝幅も5.5mmなりますが、ピッタリの溝を切削すると背板のはめ込みがきつくなりがちです。刃径・6mmのストレートビットを使用しはめ込みがスムーズに出来る溝を切削するのが一般的です)
トリマーについて(ストレートガイドの使用方法等)詳しくは、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。


溝は木端面から10mm程度内側に切削する

ストレートガイドとビット内寸を10mm程度にセット
溝の位置は、部材背面側の木端面から10mm程度内側になります。
ストレートガイドとビット内寸間を、10mm程度にセットします。

切削始めと終わりの形状が半円形になる

側板溝底から半円分ずらした位置に墨線

側板の溝底位置から半円分ずらした位置に墨付け

切削始めと終わりに墨付け
天板・地板に端部を残す溝切削をしていきます。
切削範囲を天板・地板の内側・端部に墨付けします。
(切削始めと終わり部分の形状は、半円形になります。側板の溝底位置よりビットの半円分ずらした位置が墨付け位置になります)

天板・地板の木端面にストレートガイドを押し当てる

トリマーベース角を部材に当てる
切削始めは、スイッチを入れトリマーを始動し、天板・地板の木端面にストレートガイドを押し当てながら、トリマーベース前方の角部分(切削方向側)を部材に当てます。
(ストレートビットが部材に当たらない角度で保持)

トリマーベースの角を支点に立てていく

墨線にビットの位置を合わせる
ストレートビットの位置が切削始めの墨線に合うように調整しながら、トリマーベースの角を支点として徐々にトリマーを立てて(ビットを下げていく)いきます。

前方向へ切削していく

墨線際まで切削する
墨線に合わせてビットを上から降ろしながら切削しベース面が部材に完全に密着したら、前方に切削(反対の墨線際まで)していきます。

トリマーを手前に移動

トリマーを手前に移動
墨線際まで切削したら、そのまま(ストレートガイドを木端面に密着させ、スイッチが入ったまま)トリマーを手前に移動します。

トリマーベース角を支点に手前に倒していく

トリマーを手前に倒す
トリマーベースの手前の角を支点にして、トリマーを手前に倒していきます。

部材からトリマーを離す

天板・地板に一回の溝切削完了
ビットが切削した溝から完全に外れたら、トリマーを部材から離し、スイッチを切ります。

側板に溝切削

端から端まで通して溝を切削する
天板・地板木に1回目の切削が出来たら、トリマーの設定(ストレートビットの切削深さ・ストレートガイドの位置)を変えずに側板へ溝を切削(1回目)します。
側板木端面にストレートガイドを押し当て、端から端まで通して切削します。
トリマーによる切削は、1回あたり最大深さが3mm程度になります。
前述の段欠き加工と同様に、溝を完成させるには何回かに分けて徐々に深く切削していきますが、ビットの設定(出寸法)を変えたらそのたびに全ての部材(天板・地板・側板)を切削します。

すべての部材の溝切削完了

フレーム部を組み立てる

背板を溝にはめ込む

背板を溝にはめ込み取り付け
フレーム部の溝に背板をはめ込んだら、背板の取り付け完了です。
まとめ
今回は箱物家具の背板の取り付け方法の中から、よく用いられる ”段欠き加工による取り付け” と ”溝切削・はめ込みによる取り付け” の2つの方法を説明しました。
背板は構造やデザインによって省略されることもありますが、箱物家具のゆがみを防止したり、強度を高める役割がある重要な部材の一つです。
今回紹介した、”段欠き加工による取り付け” と ”溝切削・はめ込みによる取り付け” は、両方共家具の側面から背板が見えないので、スッキリとした仕上がりになります。
参考にしてみてくださいね。