チェストや本棚は、”箱物家具” と呼ばれます。
箱物家具は、板材で箱状のフレームを組み立ててから、引き出しや扉を取り付け作られます。
今回は、箱物家具のフレーム部材の中から、”地板” と ”側板・中仕切り板” の接合にはどのような方法があるのか説明していきます。
地板と側板・中仕切り板の接合位置による種類分け
地板と側板の接合位置は、大きく2種類に分けられます。
地板に側板が乗る場合と、地板が側板に挟まれる場合です。
側板には、棚や扉などが取付られ、それらの重さを支えることになります。
脚が取付られる箱物家具や吊戸棚などは、地板の上に側板を乗せる構造(側板にかかる重さを地板で受け止める)にする事で、フレーム部分(天板・側板・地板で組まれた枠)の強度を高めています。
地板の下・前面に ”付け台輪” を取り付け(地板を床面から上げる)、側板を床面まで伸ばして支えにする形状の箱物家具があります。
地板を側板で挟み込む構造になり、側板と台輪で家具の重さを支えることになります。
中仕切り板は、基本的に地板の上に乗る構造になります。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合の接合方法
地板に側板・中仕切り板が乗る場合の接合方法は、基本的に「天板と側板・中仕切り板の接合方法」(天板を地板に置き換える)と同じになります。
ビス止め
”ビス止め”(地板に側板・中仕切り板が乗る場合)は、木ネジやコーススレッドなどのビスを地板裏側からねじ込んで、側板・中仕切り板と接合する方法です。
天板と側板・中仕切り板のビス止めの場合、ビスの頭を隠し外観をスッキリ見せる為に ”ダボ埋め” (ビスの頭を板面より深くねじ込み、上から木栓(ダボ)を埋め込む方法)を用いる事が多いです。
一方地板と側板・中仕切り板のビス止めの場合、地板の裏側にビスの頭がある為見えにくく、脚や台輪の取り付け位置にビスが隠れる事もある為、ダボ埋めを行わないことが多いです。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合のビス止めの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事内・ビス止めの項目(天板を地板に置き換える)を参照してください。
ダボ接ぎ
”ダボ接ぎ” は、部材の接合面両側にダボ用錐(普通のドリルビットも可)でダボ穴をあけ、ダボを差し込み(接着剤を塗布)、部材同士を圧締して接合する方法です。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合のダボ接ぎは、地板(接合面)と側板・中仕切り板の木口にあけたダボ穴へダボを差し込み、クランプ等で圧締して接合します。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合のダボ接ぎの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事内・ダボ接ぎの項目(天板を地板に置き換える)を参照してください。
ビスケットジョイント
”ビスケットジョイント” は、専用の電動工具 ”ジョイントカッター” で部材の接合面両面に半月状の溝を切削し、ビスケットを差し込み(接着剤を塗布)、部材同士を圧締して接合する方法です。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合のビスケットジョイントは、地板(接合面)と側板・中仕切り板の木口にジョイントカッターで切削した溝へビスケットを差し込み、クランプ等で圧締して接合します。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合のビスケットジョイントの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事内・ビスケットジョイントの項目(天板を地板に置き換える)を参照してください。
ジョイントカッターの使い方・ビスケットジョイントのやり方に関しては、ジョイントカッターの構造と使い方とは? の記事を参照してください。
片胴付き追い入れ接ぎ・肩欠き追い入れ接ぎ
”片胴付き追い入れ接ぎ” とは、部材の接合箇所を加工しはめ合わせて接合する ”接ぎ手” の一種で、箱物家具の接合箇所や、引き出しのような箱を組む際の接合部分に用いられます。
片胴付き追い入れ接ぎは、片方の部材に溝を切削し、もう片方の部材端部に片胴付きのさね加工を施します。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合は、地板接合面に溝加工をして側板・中仕切り板の端部木口面に片胴付きのさね加工を施します。
両部材に加工を施したら、接合部に接着剤を塗布し、溝にさねをはめ込み圧締します。
片胴付き追い入れ接ぎは、接合部分の木端面に追い入れの形が見えてしまいます。
地板の溝を端から端へ通すのではなく木端面の少し手前で溝を止め、側板・中仕切り板のさね端部を欠き取り胴付き面を足すことで、木端面に追い入れの形が見えない ”肩欠き追い入れ接ぎ” による接合が可能になります。
箱物家具の天板・地板と側板・中仕切り板の接合など外観が重視される箇所に用いられます。
片胴付き追い入れ接ぎと肩欠き追い入れ接ぎの加工方法に関しては、片胴付き追い入れ接ぎの加工方法とは? の記事を参照してください。
雇いざね接ぎ
”雇いざね接ぎ” は、部材の接合面両側に溝(端部を残す)をほり、さねをはめ込み(接着剤を塗布)、部材同士を圧締して接合する方法です。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合の雇いざね接ぎは、地板接合面と側板・中仕切り板の木口面に溝を掘り、さねをはめ込んで圧締し接合します。
地板に側板・中仕切り板が乗る場合の雇いざね接ぎの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事内・雇いざね接ぎの項目(天板を地板に置き換える)を参照してください。
地板が側板に挟まれる場合の接合方法
地板が側板に挟まれる場合の接合方法は、基本的に「側板・中仕切り板と棚板(固定棚)の接合方法」(棚板を地板に入れ替える)と同じになります。
ビス止め
地板を側板で挟む場合の ”ビス止め” は、木ネジやコーススレッドなどのビスを側板外側から地板木口面にねじ込んで接合します。
棚板(固定棚)と側板のビス止めの場合、ビスの頭を隠し外観をスッキリ見せる為に ”ダボ埋め” (ビスの頭を板面より深くねじ込み、上から木栓(ダボ)を埋め込む方法)を用いる事が多いです。
地板を側板で挟むビス止めの場合も同様に、”ダボ埋め” による仕上げを用いることが多くなります。
地板を側板で挟むビス止めの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。側板・中仕切り板と棚板(固定棚)の接合方法とは? の記事内・ビス止めの項目(棚板を地板に置き換える)を参照してください。
ダボ接ぎ
地板を側板で挟む場合の ”ダボ接ぎ” は、地板木口面と側板接合面にあけたダボ穴へダボを差し込み、クランプ等で圧締して接合します。
地板を側板で挟む場合のダボ接ぎの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。側板・中仕切り板と棚板(固定棚)の接合方法とは? の記事内・ダボ接ぎの項目(棚板を地板に置き換える)を参照してください。
ビスケットジョイント
地板を側板で挟む場合の ”ビスケットジョイント” は、地板木口面と側板接合面にジョイントカッターで切削した溝へビスケットを差し込み、クランプ等で圧締して接合します。
地板を側板で挟む場合のビスケットジョイントの詳しい接合方法は、箱物家具の作り方。側板・中仕切り板と棚板(固定棚)の接合方法とは? の記事内・ビスケットジョイントの項目(棚板を地板に置き換える)を参照してください。
ジョイントカッターの使い方・ビスケットジョイントのやり方に関しては、ジョイントカッターの構造と使い方とは? の記事を参照してください。
通し追い入れ接ぎ・胴付き追い入れ接ぎ
”通し追い入れ接ぎ” は、溝を部材の端から端まで通して切削し、もう一方の部材の端部(木口面)をそのままはめ込んで(接着剤を塗布)接合します。
地板を側板で挟む場合の通し追い入れ接ぎは、側板内側(接合面)に溝を切削し、その溝に地板をはめ込んで接合方法(接ぎ手)します。
通し追い入れ接ぎは、部材の木端面に接ぎ手の形状が見える仕上がりになります。
箱物家具の天板と側板、地板と側板の接合で外観をスッキリ見せたい場合は、接ぎ手の形状が木端面に見えない、”胴付き追い入れ接ぎ” を用います。
胴付き追い入れ接ぎは、側板内側の溝を端まで通さず木端面(家具の正面側)手前で止め、地板の端部(家具の正面側)を欠き取ってはめ込みます。
通し追い入れ接ぎ・胴付き追い入れ接ぎの加工方法に関しては、通し追い入れ接ぎ・胴付き追い入れ接ぎの加工方法とは? の記事を参照してください。
まとめ
今回は、箱物家具の地板と側板・中仕切り板の接合方法について説明しました。
地板と側板の接合場合、接合位置の違いによって用いられる接合方法が変わります。
地板に側板が乗る場合は、基本的に天板と側板の接合方法と同じになります。
地板が側板に挟まれる場合は、基本的に側板と棚板(固定棚)の接合方法と同じになります。
地板と中仕切り板の接合に関しては、天板と中仕切り板の接合方法と同じになります。
地板と側板・中仕切り板の接合方法は、製作する箱物家具のデザイン・形状に合わせて選択する必要があります。
今回紹介した接合方法を参考にしてみてくださいね。
箱物家具のその他のフレーム部接合方法に関しては、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? と 箱物家具の作り方。側板・中仕切り板と棚板(固定棚)の接合方法とは? の記事を参照してください。