DIYにおいて使用頻度が高い金物と言えば、”丁番” です。
丁番は家具や建具の開閉部に必要な金物で、中央の芯棒を軸に2枚の同形状の羽根が回転する形が基本です。
しかし、丁番には基本形の他にも様々種類があり、使い方や取り付け方法も異なります。
今回は、キャビネットや冷蔵庫などに使用される、”ピボットヒンジ(Pヒンジ・キャビネットヒンジ・ピボットヒンジ)” について使い方と取り付け方法について説明します。
ピボットヒンジ
”ピボットヒンジ” は扉の上下に取り付けられ(回転軸となる)、扉の開閉を担う丁番になります。
”軸吊り丁番” とも呼ばれ、丁番が扉の上下に取り付けられる事ですっきりとした見た目になります。
ピボットヒンジには、取り付け方法や形状・使い方の違いから、”Pヒンジ” ”キャビネットヒンジ” ”ピボットヒンジ”と呼び名の異なる丁番があります。
Pヒンジ
”Pヒンジ” は、キャビネットなどの取付枠と扉の上下部分に掘り込み加工を施して取り付ける丁番です。
Pヒンジには向きがあり、一枚の扉に左(左下・右上兼用)丁番と右(右下・左上兼用)丁番を組み合わせて取り付けます。
扉を開く時は、扉自体を前方に持ち出しながら開き、270°の開閉が可能(扉の厚みによる)です。
扉を前に持ち出しながら開くので、連続扉の場合でも隣の扉に干渉する事無く、180°近くまで開く事が可能です。
Pヒンジの取り付け方法
Pヒンジは、扉の上下(この場合は扉の木口面)と取付枠の上下(この場合は側板と天・地板の木端面)に取り付けます。
取付箇所を丁番の厚み分掘り込んでから取り付けていきます。
扉上下の木口面の掘り込み加工はトリマーを使用して加工します。
扉に取り付ける丁番部分の 長さ・幅・厚み を計測しておきます。
掘り込み加工は、トリマーにストレートガイド・ストレートビット(丁番幅≧ビット径)を装着し、扉の表側をガイド面とします。
トリマーのベース面からのビットの出を、丁番の厚み分(掘り込み深さ)になる様に調整します。
トリマーのストレートガイドを使用した加工に関しては、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
Pヒンジは開閉をスムーズにする為、取付枠(取付枠側の丁番)と扉との間に1mm程度の隙間を取ります。(隙間が無いと、開閉時に扉の角が取付枠に干渉してしまいます。)
扉側の丁番部分を正確な位置に設置し、丁番とガイド面(扉表面)の間隔を計測します。
ストレートガイドとビットの間隔を、計測した間隔(丁番とガイド面の間隔)と同じになる様に調整します。
扉木口面への加工はトリマーが不安定になりがちなので、扉側を固定し、ガイド面(扉表面)にストレートガイドを押し当て切削します。
掘り込み加工を施した箇所にPヒンジを当てはめてみると、欠き取っていない箇所と丁番が重なる部分があります。
重なる部分を丁番の厚み分、トリマーを使用し(フリーハンドで)欠き取ります。
重なり部分の欠き取り加工が出来たら、丁番をはめ込み(正確な取付位置に)ネジ位置に千枚通しで印付けします。
木材の木口面にネジを打ち込む時は、割れが発生しやすいので、ドリルビット(使用ネジ径より小さい径のドリルビット使用)で下穴をあけておきます。
取付枠の上下に掘り込み加工を施していきます。(扉同様にトリマーを使用します。)
取付枠に固定する丁番部分の、厚み・幅・長さを計測します。
掘り込み寸法を取付枠に墨付けします。
トリマーにはストレートガイド・12mmストレートビット(ビットの出を丁番の厚みと同じにする)装着します。
始めに、掘り込み箇所の内端(天板・地板側)を切削していきます。
取付枠の側板をストレートガイドのガイド面とし、ビットが内端の位置になる様に、ビットとストレートガイドの間隔を調整・固定します。
天板・地板両方に同様の掘り込み加工を施します。
次に、天・地板側面をガイド面とし、掘り込み箇所の上端を切削します。
トリマーのビットが上端の位置になるように、ビットとストレートガイドの間隔を調整・固定します。
天板・地板両方に同様の掘り込み加工を施します。
掘り残した部分をトリマー(フリーハンド)で切削したら、掘り込み加工の完成です。
掘り込んだ所に丁番をセットしたら、千枚通しでネジ位置へ印付けをします。
丁番がずれない様に慎重にネジ止め・固定します。
扉の掘り込み部分に丁番を合わせてはめ込んでいきます。
扉を正確な位置にセット出来たら、ネジ止め・固定していきます。
扉上下に丁番が固定出来たら、Pヒンジの取り付け完成です。
Pヒンジは、扉を閉めた時に保持する事が出来ないので、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
キャビネットヒンジ
”キャビネットヒンジ” は、キャビネットなどの取付枠の上下と扉の内側上下に取り付けて使用する丁番です。
取付枠・扉に面付け(掘り込み加工をせずに丁番を取り付ける)が出来る為、取付が容易になります。
キャビネットヒンジには向きがあり、一枚の扉に左(左下・右上兼用)丁番と右(右下・左上兼用)丁番を組み合わせて取り付けます。
扉を開く時はPヒンジと同様に、扉を前に持ち出しながら開きます。
連続扉の場合でも開閉が可能ですが、扉の厚みによって(扉が厚くなると)隣の扉に干渉する可能性があります。
180°以上の開閉も可能ですが、扉の厚みによって(扉が厚くなると)取付枠に干渉する場合があります。
キャビネットヒンジの取り付け方法
キャビネットヒンジは、丁番の取付枠側を天・地板の木端面へ、扉側を扉内側の上下に取り付けます。
取付枠側のキャビネットヒンジの位置は、丁番の扉側の際が側板の外際と重なり、なおかつ丁番の取付枠側の際が天・地板の外際と重なる場所になります。
キャビネットヒンジを取付枠の正確な位置にセットしたら、ネジ止め位置に千枚通しで印付けします。
キャビネットヒンジがずれない様に、印に合わせてネジ止めします。
丁番の扉側を開いた状態にし、扉内側にあてがいます。
扉側の丁番の取り付け位置は、丁番の際が扉内側の際に重なる様にします。
ネジ止め位置に千枚通しで印付けし、丁番がずれない様にネジ止めしていきます。
扉内側上下に丁番が固定出来たら、キャビネットヒンジの取り付けの完成です。
掘り込み加工をしなくても、扉と取付枠との隙間を適切な幅にする事が出来ます。
キャビネットヒンジは扉を閉めた時に保持する事が出来ないので、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
ピボットヒンジ
”ピボットヒンジ” は、インセット扉(取付枠の内側に扉が収まる)に使用されます。
ピポットヒンジは回転軸と軸受のパーツに分かれており、扉の上下に回転軸を取り付け、取付枠の内側(天、地板の内側)に軸受を取り付けて使用します。
ピボットヒンジには、回転軸がスプリング式で扉の取り付けが簡単に出来るタイプや、丁番を取り付けた後に扉を前後・左右に微調整出来るタイプがあります。
ピボットヒンジ(調整可能タイプ)の取り付け方法
調整式ピボットヒンジの取り付け方法について説明していきます。
ピボットヒンジはインセット扉に使用する為、取付枠の内側に収まる扉を用意する必要があります。
軸受を取り付ける天・地板と扉の隙間は、使用するピボットヒンジによって指定されています。
指定された隙間寸法より狭かったり広すぎたりすると、扉がはまらなかったり、外れてしまう事になります。
指定された隙間寸法と取付枠の内寸から導き出される扉寸法に、正確に合った扉を用意する必要があります。(側板と扉の隙間は、扉開閉時に側板と干渉しない寸法にします。)
回転軸を扉の内側上下にネジ止めし取り付けます。
回転軸には調整ネジが2つあります。
調整ネジAを緩めると、扉の位置を左右方向に調整する事が出来ます。
調整ネジAを緩めた上で、調整ネジBを緩めたり締めたりすると、扉の位置を前後方向に調整する事が出来ます。
軸受を天・地板に取り付けます。
扉正面から回転軸のセンターまでの寸法が、天・地板前端から軸受取付位置までの寸法になります。
天・地板にドリルビットで下穴をあけたら、軸受をはめ込みます。
地板と左右の側板を組みたて、上から扉の回転軸を軸受に差し込みます。
天板を上からはめ込み(扉の回転軸に軸受をはめ込みます)左右の側板に固定します。
調整ネジで扉の位置(左右・前後)を調整します。
調整式ピボットヒンジの取り付けの完成です。
ピボットヒンジはインセット扉に使われる為、扉の開き角度はPヒンジ・キャビネットヒンジに比べて狭く、180度まで開く事が出来ません。
扉の開閉にはツマミ等の取っ手が必要になります。
ピボットヒンジは扉を閉めた時に保持する事が出来ないので、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
まとめ
今回は、”ピボットヒンジ(Pヒンジ・キャビネットヒンジ・ピボットヒンジ)” について、使い方と取り付け方法について説明しました。
Pヒンジ・キャビネットヒンジは、扉を前方に持ち出しながら180°近く開くので、連続扉でも開閉が可能です。
扉の上下に取り付ける為、扉が閉じている時に丁番が目立ちません。
その他の種類の丁番に関しては、蝶番(丁番)の種類と使い方、取り付け方法とは?まとめ の記事を参照してください。