ホームセンターなどで購入した木材やDIYで作った木工品などが、時間が経つにつれ反ったり割れてきたり…そんなことよくありませんか?
今回は、木材の最大の特徴 “反り” “割れ” について、「どうして反るのか?」「どうしたら反りや割れを防止出来るのか?」ということについて説明します。
木の反りや割れが起こる原因とは?
「木材に含まれる水分が蒸発・乾燥し、収縮が起こる」ことにより反りや割れが起こります。
木は成長し生きていくために根から地中の水分を吸い上げており、吸い上げた多くの水分を内部に蓄えることが出来ます。
伐採直後の木材は、含水率が200%にも達しています。
※“含水率” = 木材の水分量 / 水分を全く含まない木材の重さ を%で表したもの
伐採された木材(丸太)は、”挽(ひ)き材”(丸太を縦方向にさいた板材)に製材されます。
挽き材の段階では含水率が高く、そのままではカビや腐りを発生しやすいだけでなく、水分の蒸発による材の動き(収縮や割れ)も大きくなります。
木材を使用する際にカビや腐り、反りや割れを起こさない為に、挽き材をしっかり乾燥させる必要があります。
木材の乾燥法には、”天然乾燥” と ”人口乾燥” があります。
天然乾燥は、屋外(屋根下の場合もある)に挽き材を ”桟積み” し、半年以上時間をかけ自然に乾燥させる方法です。
(桟積みとは、材の間に桟木を挟んで隙間を作りながら積み重ねる事)
天然乾燥では、乾燥場所の環境(温湿度)に左右されますが、含水率が15%ぐらいまで下がります。
人工乾燥は、機械を使用し強制的に乾燥させる方法です。
挽き材を桟積みし、専用の乾燥庫に入れ、約2週間程度乾燥させます。
人工乾燥は、温度・湿度・空気循環を管理し、木材を所定の含水率に調整・乾燥させる事が出来ます。
木材は含水率約30%を下回ってくると収縮し変形し始めます。
天然乾燥・人工乾燥で含水率を下げる事で、反りや割れの変形をある程度出し切った状態にします。
最後に反りや割れを取り、木材表面を平滑にする仕上げ加工が行われて、工場から出荷されます。
乾燥材(含水率20%以下)として流通し、建築・家具・木工DIYなどの材料として使われます。
ではなぜ乾燥して製材され、変形しないはずの木材が反ったり割れたりするのか?
「木は呼吸している」なんてフレーズ聞いたことないですか?
建築・家具・木工DIYなどで使用する木材や作られた木製品は、その周りの湿度・温度に影響され水分を吸収したり排出したりします。
製材され工場から出荷されたときの木材の含水率が、使用環境の湿度・温度の影響をうけ、変化する事で反りや割れが起こってしまうのです。
木材の反る方向とは?
木材は丸太からの製材の仕方によって ”柾目(まさめ)板” ”板目(いため)板” に分かれます。
柾目板・板目板などの木材の名称に関しては 木工DIYするには知っておくべき木材の構造と性質、名称について説明します。 の記事を参照してください。
”柾目板”は、木目が上下に真っ直ぐ通っており、反りや割れが起こりにくい材です。
柾目板は、材の狂いが少なく見栄えも良い為、化粧板(柱や鴨居など、仕上げ材として見える場所に使用される材)として使用される事も多いです。
一本の丸太から柾目板のみを製材しようとすると、無駄になる部分が多くなる事もあり、単価が高い材になります。
”板目板”は、木目が山形や不規則な模様になっていて、非常に反りやすい材です。
板目材は、一本の丸太から無駄なく製材出来る為、単価が安くなります。
ホームセンターなどで販売される木材のほとんどが板目材になります。
板目板は温度と湿度の変化によって木表側に反る(矢印の方向)性質があります。
また節の影響を受けて反ったりねじれたりすることもあります。
集成材や合板は反りが出にくい様に成形されています。
しかし厚みが薄めの材であったり湿度の影響を強く受けたりすると、反りが起こることがあります。
反る方向が読みづらいのも難しいところです。
集成材や合板に関して詳しくは、ホームセンターで購入出来るDIYに適した木材の種類とは? の記事を参照してください。
反りや割れを防ぐ方法とは?
どの様に木材が使用されると、反りが起こりやすいのかを知る必要があります。
箱状に組まれている物(チェストなど)や、重い物が乗って押さえつけられている箇所に使用されている木材は反りづらいと言えます。
幅広の一枚板や、幅の狭い材をはぎ合わせて作られた板材(集成材など)を単体で使用する(テーブルの天板、扉、可動棚の棚板など)場合は、幅方向の反りや木口の割れが発生しやすい状況であると言えます。
(木材は木目方向の寸法を長さ、木目方向と垂直に交わる方向の寸法を幅で表します。)
幅広材の反り・割れを防ぐには、
①板材の木口に角材を接合する。⇨端ばめ接ぎの加工を施す
②板材の裏面に桟を取り付ける。⇨吸付きざん接ぎの加工を施す
③幕板のある構造に板材を取り付ける。
の加工・接合方法があります。
①板材の木口に角材を接合する方法では、端ばめ接ぎと呼ばれる加工を施します。
端ばめ接ぎは、幅広の板材木口面に ”横木” と呼ばれる角材を様々な方法で接合し、反り・割れを防ぎます。
横木(木目方向)は、板材の木目方向と必ず垂直になる様に接合します。
端ばめ接ぎの加工法に関しては、端ばめ接ぎによる木材の反り・割れの防止法とは? の記事を参照してください。
②板材の裏面に桟を取り付ける方法では、吸付きざん接ぎと呼ばれる加工を施します。
吸付きざん接ぎには、木ネジ等で木製の桟木を取り付ける・金属の桟(反り止め金物)を取り付ける・あり形の桟木を取り付けるなどの方法があります。
桟は、板材の木目方向と必ず垂直になる様に接合します。
桟の取り付けで重要なポイントは “木材の幅方向の膨張・収縮は止めずに反りのみを止める取り付け方をする” ことです。
桟で木材の膨張・収縮を止めてしまうと、割れが発生してしまう事があるからです。
ねじ止めで固定する木製の桟や反り止め金具の場合、長穴のねじ穴にして、板材の伸縮があってもねじ穴の中でネジ頭が移動できる仕組みにします。
あり形の桟木を板材の裏にはめ込む ”あり形吸付きざん接ぎ” では、桟木を接着剤で固定はせずに板材の伸縮に対応出来る様にしておきます。
吸付きざん接ぎの加工法に関しては、吸付きざん接ぎによる木材の反りやねじれの防止法とは? の記事を参照してください。
③幕板のある構造に板材を取り付ける方法は、机やテーブルによく見られ、脚を幕板で連結し、その枠に板材(天板等)を取り付けます。
幕板部分と板材の接合は、板材の伸縮に対応した金具を使用したり、②の桟を取り付けた方法と同じで幕板のねじ穴を長穴にしてねじ止め固定します。
塗装を組み立て前に行う場合も注意が必要です。
板材の片面だけ塗装した状態ですと、塗装していない面との水分のバランスが崩れ反りが発生してしまいます。必ず両面塗装をしてください。
木材の保管方法も重要なポイントです。
雨ざらしはもってのほかですが、直射日光を避けてなるべく室内保管をしてください。
ホームセンターで手に入る集成材はビニール梱包されていることが多いので開封後はなるべく早く加工・組み立て等を行った方がいいでしょう。
やむを得ず長期保管する場合は、要らなくなった毛布などの布でくるんで湿度など外部の影響を受けないようにしてください。
反ってしまった木材を水で濡らしたり、アイロンをかけたりして修正する方法がありますが、コツが必要でかえって反りが酷くなったり割れたりすることがあるのでおススメしません。
ホームセンターでの木材のチェックポイント。
DIYerの多くの方がホームセンターで木材を購入してモノ作りしていると思います。
今回反りと割れの防止法について解説してきましたが、大前提として反りや割れのない状態の良い木材を選んで購入してくる事が必要です。
ホームセンターでは不特定多数の方が木材を選別して購入している為、在庫が少なくなってくるとはじかれて残った粗悪な木材だらけになってしまいます。
そのような木材は避けたいので、なるべく新しい木材が入荷したタイミングを狙って購入するようにします。
ホームセンターによっては “半外状態” に木材が陳列されていて反りなどが酷いところもあるので、木材の陳列・保管状態にも注目することも重要です。
選別のチェックポイントは “反り” “割れ” は勿論の事、“節” “ヤニ” も注意します。
節は反りの原因にもなり、抜けてし穴があいてしまう場合があります。
ヤニは塗装時に厄介な障害になるので注意が必要です。
集成材などの板材は “反り” “傷やへこみ” “真っ直ぐ製材されているか” をチェックします。
比較的反りが出ているものは少ないですが、傷やへこみの有無・寸法どうり真っ直ぐ正確な製材がされているかは後の制作に影響が出るので、しっかりと確認します。
ホームセンターの木材売り場で “KD材” と表記されたものを見たことありませんか?
KD材とは “人工乾燥した材” の事です。
それに対し “AD材”(天然乾燥した材)や “グリーン材”(天然乾燥が不十分な材)があります。
表記していないことが多いですが “グリーン材” はホームセンターでも販売されており、含水率の高い材なので反り・割れが起こりやすく、購入・使用時には注意が必要です。
まとめ。
今回は木材の “反り・割れ” の原因と防止法について説明いたしました。
木材の特性を理解し、対応できる技術を身に付けていければいい物が作れると思います。
木材選びや制作の際に参考にしてみてくださいね。