家具や建具の開閉部に使われている金物、”蝶番(ちょうつがい・ちょうばん)” 。
DIYにおいても、使用頻度が高い金物です。
しかし、蝶番と一口に言っても様々な種類・使い方があり、それぞれ取付方法が異なります。
今回は様々な蝶番の中から、一般的によく使用される ”平丁番” ”抜き差し丁番” ”フラッシュ丁番” の使い方と取り付け方法について説明していきます。
蝶番(丁番)とは?
家具や建具(扉や蓋など)の開閉部に使用されている金具が、”蝶番(ちょうつがい)” です。
形状が蝶に似ている為その名が付きましたが、現在は略字の ”丁番” が用いられることが多く、呼び名も ”ちょうばん” と呼ばれています。
(今回は ”丁番(ちょうばん)” を用いて説明していきます。)
丁番の基本構造は、2枚の羽根が並び、中央の管に芯棒を通す事で、芯棒を軸に羽根が回転する仕組みになっています。
丁番は、家具用と建具用に分けられ、建具用丁番の方が耐荷重が大きく作られています。
今回は、丁番の基本形である ”平丁番” ”抜き差し丁番” ”フラッシュ丁番” について説明します。
平丁番
一般的に丁番と呼ばれ、最も多く使用されているのが、”平丁番” です。
サイズが豊富で多様な箇所で使用されています。
ナイロンリング入丁番は、管の間にナイロンリングを挟む事により、丁番のスムーズな動きと静かな開閉音を実現した平丁番になります。
平丁番の取り付け方法
平丁番を扉の開閉(丁番を扉内側と側板木端面に固定)に使用する場合を例に、取り付け方法について説明していきます。
丁番の取り付け位置は、羽根の際がそれぞれ「側板外際」と「扉木端面際」と重なる様にします。
(管部分は取付枠・扉の端から外側にはみ出ます)
一般的な平丁番は、”背押し” と呼ばれる加工がしてあります。
背押しとは、羽根を芯棒の中心に向かって押し曲げる加工です。
羽根同士を平行になる様に向かい合わせにした時、背押しありの丁番は管の直径より少し内側に入りこみますが、背押し無しの丁番は管の直径と同じになります。
背押しのあるなし・欠き取り加工のあるなしで丁番を取り付けた場合の扉と取付枠の隙間を比べてみます。
背押しがしてある丁番の場合、扉と取付枠双方に羽根の厚み分の欠き取とり加工をして丁番を取り付けると、扉と取付枠の隙間が丁度よくなる様になっています。
背押しがしていない丁番の場合、扉・取付枠に深く欠き取り加工をしないと隙間が大きくなってしまったり、丁番の収まりが悪くなってしまいます。
今回取り付ける平丁番は、”背押しあり” なので、取り付け箇所(扉内側と側板木端面)に丁番の厚み分の溝を欠き取ってから丁番を取り付けます。
ノギスで丁番の羽根部分の厚みを計測します。
丁番の厚みを欠き取るには、トリマーを使用します。
今回は欠き取り加工用型板(切削ガイドとなる5.5ミリ厚合板にフェンスを取り付ける)を用意し、トリマーにテンプレットガイド・ストレートビット(6mm)を装着し切削していきます。
欠き取り加工用型枠は、フェンス部分を加工材に押し当てクランプで固定して使用します。
実際の欠き取り部分は、型枠のフェンス内側になります。
欠き取り加工用型板は、5.5mm厚合板のフェンス内側になる部分を、羽根長手端から2.5mm程度・羽根短手端から2mm、外側に広げた大きさを切り取っておきます。(フェンスと重なる部分も同じ幅で切り取っておきます。)
ストレートビットの出寸法を「型板の厚み・5.5mm+丁番の厚み」 にセットしたら、型板に沿って、時計回りにトリマーで切削していきます。
型板内を全て欠き取ると、丁番をピッタリはめる事が出来ます。
扉の内側にも同様に、欠き取り加工を施します。
トリマーのテンプレットガイドや欠き取り加工に関しては、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
側板木端面に丁番をネジ止めしていきます。
所定の位置へ正確に丁番を取り付けないと、扉の位置がずれたり、開閉が出来なくなったりします。
丁番を取り付け位置にセットし、ネジ穴の中央に千枚通しで印を付け、正確な位置にネジ止め出来る様にしておきます。(場合によって、ドリルビットで下穴をあける事もあります。)
丁番が正確な位置からずれないよう慎重にネジ止めしていきます。
扉内側にも同様に、ネジ止め位置に千枚通しで印付け、ネジ止めしていきます。
欠き取り加工による平丁番の取り付けの完成です。
丁番取り付け箇所を欠き取った事により、側板と扉の隙間が丁度良く収まっています。
平丁番は、扉を閉めた時に保持する事が出来ないので、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
抜き差し丁番
”抜き差し丁番” は、片方の羽根に芯棒が付属し、もう片方は管のみになっており、2枚の羽根が分離し抜き差しが可能な丁番です。
扉の取り付け(吊り込み)取り外しが容易で、メンテナンス等がしやすい利点があります。
平丁番は蓋の開閉部の様な横並びでの使用が可能ですが、抜き差し丁番は横並びでの使用は出来ず、必ず上下方向に取り付け・使用します。
建具などによくみられる ”旗丁番” は抜き差し丁番の一種です。
抜き差し丁番の取り付け方法
抜き差し丁番を扉の開閉(丁番を扉内側と側板木端面に固定)に使用する場合を例に、取り付け方法について説明していきます。
抜き差し丁番は、扉側に芯棒無しの羽根、取付枠側に芯棒有りの羽根をそれぞれ取り付け、取付枠側の芯棒に扉側の管を上からはめ込んで取り付けます。
抜き差し丁番(芯棒が羽根に固定されているタイプ)には左用・右用があり、購入時注意が必要です。
一般的に扉が手前に開く側から見て丁番の取付け位置が、左になる場合は左用(左勝手)、右になる場合は右用(右勝手)の丁番を使用します。
取付枠の際に芯棒有り羽根の際を合わせ、ネジ止め位置に千枚通しで印付けしたら、ネジ止めして固定します。
扉の内側には、芯棒無し羽根をズレの無い様に取り付けます。
取付枠の芯棒に扉の管を上からはめ込んで、抜き差し丁番の取り付けの完成です。
※上記の説明では欠き取り加工をせずに丁番の取付けをしていますが、実際には適切な深さ(背押しのある無しによる)の欠き取り加工をしてから丁番の取付けを行います。
抜き差し丁番の場合、扉を閉じた状態を保持するには、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
ワンタッチリリース丁番・丁番掛金
ワンタッチリリース丁番や丁番掛金と呼ばれる丁番は、ロック機能を解除する事で丁番の抜き差し(取り外し)が可能になるので、抜き差し丁番の一種と言えます。
ワンタッチリリース丁番は、ツマミを内側に引っ張ると芯棒が引っ込んで、羽根同士が外れます。
芯棒が付属している側の管にある溝にツマミをはめ込む事により、芯棒を引っ込めた状態を保持出来るので扉の取り付け・取り外しが容易に出来ます。
丁番掛金は、レバーを外すと芯棒をずらし外す事が出来ます。
ワンタッチリリース丁番・丁番掛金は芯棒のロック機能があるので、通常の扉の様な上下に取り付けた使用だけでなく、蓋の開閉の様な横並びの使用も可能です。
フラッシュ丁番
”フラッシュ丁番” は、平丁番の様な左右に均等な大きさの羽根が無く、片側の羽根が外側と内側の羽根に分割されており、それぞれ取付枠と扉に取り付け固定する仕組みになっています。
その為、扉を閉めた時の取付枠と扉の隙間が羽根の厚み片側一枚分になり、羽根の厚みの欠き取り不要で取り付けが出来ます。
フラッシュ丁番は左用(左勝手)・右用(右勝手)は無く、芯棒が抜けるタイプは芯棒の上下を入れ替える事で右左どちらでも使用出来ます。
芯棒が抜けるタイプのフラッシュ丁番は、蓋の開閉部等の横並びの使用は出来ません。
フラッシュ丁番の取り付け方
フラッシュ丁番(芯棒が抜けるタイプを使用)を扉の開閉(丁番を扉内側と側板木端面に固定)に使用する場合を例に、取り付け方法について説明していきます。
スラッシュ丁番は、外側の羽根を取付枠側へ、内側の羽根を扉側に取り付けます。
丁番が可動しやすい様に、外側の羽根は管と取付枠の側板外際との隙間を0.5mm~1mm程度あけて取り付けます。(同様に、内側の羽根は管と扉木端面際との隙間を0.5mm~1mm程度あけて取り付けます。)
隙間の間隔はすべての取り付け箇所で統一します。
取付枠の側板木端面に外側の羽根を取り付けていきます。
丁番を取り付け位置にセットしたら、ネジ位置に千枚通しで印付けします(場合によって下穴をあける。)
ネジが印からずれない様に注意し、ネジ止めしていきます。
取付枠に外側の羽根をネジ止めしたら、内側の羽根を開いて扉にあてがい、取付位置を墨付けします。
墨付け出来たら、芯棒を抜いて内側の羽根を外します。
扉木端面と管の隙間を0.5mm~1mm程度とり、墨付け位置にセットしたら、千枚通しでネジ止め箇所に印付けをします。
丁番がずれない様に、印に合わせて慎重にネジ止めします。
扉側の羽根と取付枠側の羽根の管に、芯棒を差し込んで連結したら、フラッシュ丁番の取り付け完成です。
フラッシュ丁番を使用する事で、欠き取り加工をしなくても、扉と取付枠の隙間を丁度良い間隔にする事が出来ます。
フラッシュ丁番の場合、扉を閉じた状態を保持するには、キャッチ等の保持金物を取り付ける必要があります。
まとめ
今回は丁番の基本形、平丁番・抜き差し丁番・フラッシュ丁番の使い方と取り付け方法について説明しました。
シンプルな形状の丁番ですが、取付を正確な位置へ行わないと開閉時の不具合や、扉と取付枠のズレが生じてしまう事になります。
正確な取付を行うためにも、ネジの印を付けたり(下穴を開ける)欠き取り加工の時には慎重に作業する事が重要です。
その他の種類の丁番に関しては、蝶番(丁番)の種類と使い方、取り付け方法とは?まとめ の記事を参照してください。