家具を製作する際には、”扉” を取り付ける場合が多くあります。
扉の作り方には様々ありますが、今回は ”かまち組” による扉の作り方について説明していきます。
かまち組とは?
角材を四角に組んだ枠を、”框(かまち)” と呼び、かまちの内側に鏡板やガラスなどをはめ込んだ物を ”かまち組” といいます。
かまちは、上下方向の ”縦かまち” と横方向の ”横かまち” を接合して組まれており、鏡板は薄い板や合板などを用います。
かまち組は軽量化を図れるだけでなく強度もある為、扉の他、箱物家具の構造部分(側板など)や住宅の天井など広く用いられています。
※住宅の玄関に使用される角材の枠も、框(かまち)と呼ばれ、取付位置によって、”上がり框” や ”付け框” の名称があります。
かまち組による扉の作り方
かまちの作り方
縦かまちと横かまちの接合方法には様々な方法がありますが、その中から代表的な接合方法を紹介します。
ビス止め(ビス頭をダボ埋めで隠す)
もっとも簡単な接合方法は、”ビス止め” になります。
ビス止めは、縦かまちの木端面から横かまちの木口面へビスをねじ込んでいきますが、縦かまちの木端面が露出する場合が多い為、ダボ埋めをしてビス頭を隠した仕上がりにします。
今回は、既製品のダボを使用しダボ埋めをしていきます。
専用のダボ用錐(使用するビスの頭が収まる径のもの)を使用し、縦かまちの木端面からビス止め位置にダボ穴(縦かまち木端面から8mm程度の深さ)をあけます。
ダボ下穴の中央にビスの下穴をあけ、ビス止めします。
ダボに接着剤を塗布し、玄翁で打ち込みます。
接着剤が乾燥したら、ダボの余分名部分をノコギリでカットします。
四隅の接合箇所をすべて同様にビス止めをしたら、かまちの完成です。
ビス頭を隠す(ダボ埋め)ビス止めに関して詳しくは、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事を参照してください。
ダボ埋めで仕上げるビス止めの他に、Kreg社製の ”ポケットホールジグ” を使用し専用のビスでかまちを接合する方法があり、簡単にかまちを接合する事が出来ます。
ポケットホールジグを使用した扉(かまち組)の作り方に関しては、こちらの動画を参照してください。
ダボ接ぎ
ダボ接ぎは、縦かまちと横かまちの接合面両側にダボ用錐(普通のドリルビットも可)でダボ穴をあけ、ダボを差し込み(接着剤を塗布)、部材同士を圧締して接合します。
縦かまちの接合面にダボ用錐で下穴を開けたら、ダボマーカーを下穴にはめ込みます。
ダボマーカーをはめ込んだ縦かまちに横かまちの木口面(接合面)を押し付け、ダボの中心位置の印を付けます。
横かまち・木口面の印に合わせてダボ用錐でダボ下穴を開けます。
ダボに接着剤を塗布し、片側の部材のダボ穴に打ち込みます。
接合面にも接着剤を塗布したら、縦かまちと横かまちをはめ合わせ、クランプで圧締し接合します。
四隅の接合箇所を同様に接合・圧締したら、かまちの完成です。
ダボ接ぎに関して詳しくは、箱物家具の作り方。天板と側板・中仕切り板の接合方法とは? の記事内のダボ接ぎの項目を参照してください。
ビスケットジョイント
ビスケットジョイントは、ジョイントカッターで切削した溝に ”ビスケット” と呼ばれるブナ材等を圧縮して作られた接合パーツをはめて 部材同士を接合する方法です。
かまち組では、縦かまちと横かまちの端部を留め加工(45°にカット)して接合する ”留め接ぎ” や、横かまちの幅が広いなど、接合面が広くビスケットが使用できる幅がある場合に用いられます。
留め接ぎにビスケットジョイントを用いた場合は、縦かまち・横かまち双方の木口面にジョイントカッターで溝を切削します。
溝を切削したら、接合面と溝に接着剤を塗布し、ビスケットを差し込みます。
縦かまち・横かまち双方をはめ合わせ、クランプ等で圧締して接合します。
四隅の接合箇所を同様に接合・圧締したら、かまちの完成です。
ビスケットジョイントに関して詳しくは、ジョイントカッターの構造と使い方とは? の記事を参照してください。
ほぞ接ぎ
ほぞ接ぎは、縦かまちにほぞ穴を切削し、横かまちにほぞ加工を施し、はめ合わせて接合します。
かまち組に用いられるほぞ接ぎは、二方胴付き平ほぞ接ぎ、ほぞが木端面に見えない様に仕上げるには三方胴付き平ほぞ接ぎや四方胴付き平ほぞ接ぎを用います。
かまちの接合にほぞ接ぎを用いるやり方は、ほぞ接ぎによるかまち組(框組)の作り方とは? の記事を参照してください。
鏡板の収め方
溝切削によるはめ込み
溝切削による鏡板の収め方は、かまち組の内側に鏡板の厚みと同じ幅の溝を切削し、はめ込んで収めます。
今回は、トリマーを使用して溝加工を行っていきます。
トリマーには、ストレートビット(鏡板の厚みと同じかそれ以下の径のビット)とストレートガイドを装着します。
※トリマーの使い方について詳しくは、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
かまち組内側に切削する溝は、横かまちは端まで通しますが、縦かまちの溝を端まで通すとかまち組の外側に溝が露出してしまいます。
縦かまちの溝は途中で止め端部を残すようにするため、切削終わり位置に墨線を引いておきます。
かまち組に使用される部材は、溝の切削面が狭い場合が多く、トリマーが不安定になりがちです。
溝切削する場合は、残りの部材を添え木として使用し、トリマーを安定して操作できるようにします。
縦かまちの溝切削の様に、溝を途中で止め部材の端部を残す加工方法に関して詳しくは、箱物家具の作り方。背板の取り付け方法とは? の記事内の ”溝切削・はめ込みによる背板の取り付け方法” の欄を参照してください。
縦かまち・横かまちすべての部材に溝を切削し、鏡板をはめ込んで組み上げると、扉の完成となります。
押し縁止め
押し縁止めによる鏡板の収め方は、かまち組の裏面・内側に「鏡板の厚み+押し縁の厚み」分段欠きをし、鏡板をはめ込み押し縁で固定して収めます。
今回は、ルーターテーブル(ルーターにはストレートビットを装着)を使用して段欠き加工をしていきます。
※ルーターテーブルに関して詳しくは、ルーターテーブルの構造と使い方 の記事を参照してください。
段欠きの寸法は、鏡板の厚みと使用する押し縁材の寸法を基準に決めていきます。
今回は、段欠きの深さを「鏡板の厚み+押し縁の厚み」、段欠きの幅を「押し縁の幅」とします。
横かまちは、端から端まで通して段欠きしますが、縦かまちは端部を残す加工となります。
※縦かまち・段欠き端部と横かまち・段欠き際は揃えるようにします。
縦かまちには段欠き端部の位置に墨線を引いておきます。
ルーターテーブルのフェンスにマスキングテープをはり、縦かまちの段欠き開始位置とストレートビットの位置を合わせます。
縦かまちの先端位置をマスキングに印します。
縦かまちを切削方向にスライドさせ、段欠き終了位置をビットに合わせたら、縦かまちの後端位置を同じようにマスキングテープに印します。
フェンス位置を前後に動かし、切削幅が押し縁材の幅になる様に調整・固定します。
縦かまちから段欠き加工していきます。
ルーターの電源スイッチを入れたら、縦かまち(かまち組で内側になる面)をフェンスに押し当てながら、先端がマスキングテープの印(先端位置印)と合うようにおろしていきます。
テーブルに縦かまちが密着したら、前方に材を送り切削していきます。
縦かまち・端部がマスキングテープの印(後端位置印)に合うまで切削したら、材をフェンスに密着させたまま少し後退させてから手前に引きビットから離したら切削終了です。
横かまちは、端から端まで通して切削します。
すべての部材が一回切削出来たら、徐々にビットの出を大きくしていき(切削深さを深くしていく)、何回かに分け仕上がりの深さ寸法に合わせていきます。
端部を残す場合、ルーターでの切削では、切削終わりが半円形になります。
縦かまちの切削端部をノミで欠き取って四角に仕上げ、縦かまち・段欠き端部と横かまち・段欠き際を揃えます。
縦かまち・横かまちを接合し、段欠き部分に鏡板をはめ込みます。
鏡板の上から段欠き部分四方に押し縁材を固定したら、扉の完成です。
まとめ
今回は、かまち組を用いた扉の作り方について説明しました。
扉の作り方は色々なやり方がありますが、かまち組を用いると軽量化・コストダウンが図れるばかりか、強度も強く狂いも出にくい扉を作る事が出来ます。
かまちの接合には様々な方法がありますが、今回紹介した例を参考に、可能な加工方法を選んで ”かまち組” を制作してみてくださいね