多肉植物などのグリーンのディスプレイにピッタリな海外の “アンティークボトルケース” 。
ボトルを収納する為の細かい仕切りが特徴的ですが、今回は杉材を使用しアンティーク加工を施した ”アンティーク風ボトルケース” を制作します。
仕切り部分に ”相欠き継ぎ” と呼ばれる接合方法を用いて、その加工法(マルノコとスライドマルノコによる2種類の加工法)について説明します。
材料と道具
材料
- 杉プレナー材 13mm×90mm×379mm 2本(側板)
- 杉プレナー材 13mm×90mm×274mm 2本(前後板)
- 杉プレナー材 7mm×70mm×363mm 3本(格子長手)
- 杉プレナー材 7mm×70mm×284mm 4本(格子妻手)
- ラワンべニア 5.5mm×284mm×363mm 1枚(底板)
- 釘
- 木工用接着剤
道具
- マルノコ(マルノコ定規使用) または スライドマルノコ
- トリマー(ストレートビット・ストレートガイド・テンプレットガイド・自作ガイド使用)
- クランプ
- さしがね・スコヤ
- 玄翁・ワイヤーブラシ・鉄工用やすり・千枚通し・サンドペーパー
塗装用具
- ターナーミルクペイント・ビンテージワイン
- ターナーミルクペイント・スノーホワイト
- ステンシル型(スポンジ等ステンシル用具)
- ターナーミルクペイント・ダストメディウム
- ブライワックス・ジャコビーン
- 刷毛・ウエス
相欠き継ぎ
”相欠き継ぎ” とは、部材同士溝を等しく切り欠き、溝が向かい合う様にはめ込み接合する継ぎ手の一つです。
建具の格子戸や障子戸に用いられています。
今回はボトルケース内側の仕切り板部分(格子)を相欠き継ぎで組み上げます。
”マルノコ” と ”スライドマルノコ” による相欠き継ぎの加工法を紹介します。
マルノコによる相欠き継ぎの加工方法
相欠き継ぎをする仕切り板は、幅・70mm・厚み・7mm になります。
相欠き継ぎは、接合する部材同士に溝を等しく切り欠くので、深さ35mm・幅7mmの溝をマルノコで加工する事になります。
マルノコの刃の出具合をスコヤ等で確認・設定したら、実際に切削(試し切り)してみます。
切削が正確な深さ(35mm)になっているか確認し、刃の出具合を最終調整します。
仕切り板に欠き取る溝の墨付けをします。
墨付け位置がずれない様にする為、同じ方向(長手同士、妻手同士)の仕切り板をまとめて(クランプで固定)墨付けしていきます。
墨付け同様、欠き取る溝がずれない様に同じ方向の仕切り板をまとめて(クランプで固定)切削します。
ただし、仕切り板をまとめただけだとマルノコのベース接地面が狭く、マルノコが不安定になり、正確な切削が出来ません。
仕切り板と同じ幅の添え木で仕切り板を挟み、マルノコのベース接地面を広くする事で、マルノコの安定・正確な切削を出来る様にします。
マルノコ定規をあて切削していきます。
左右の墨ぎわを正確に切削したら、残った部分もマルノコで(何回かに分けて切削)欠き取ります。
欠き取った溝に仕切り板をはめてみて、はまり具合を確認します。
きつ過ぎた場合は再度マルノコで切削し、微調整します。
仕切り板の長手・妻手全てに、同じ手順で欠き取り加工をします。
仕切り板の長手・妻手の溝が向かい合う様に組んでいきます。
正確な格子に組めたら、相欠き継ぎの完成です。
欠き取る溝の幅が広い相欠き継ぎの加工法など、マルノコに関しては、マルノコの使い方と構造について詳しくお教えします。 の記事を参照してください。
スライドマルノコによる相欠き継ぎの加工方法
スライドマルノコには、”ストッパーアーム” と ”ツマミネジ” が付属しています。
それらの機能(ノコ刃の下限位置調整)を利用して、相欠き継ぎの欠き取り加工を行います。
ストッパーアームを前方に回転させ、ノコ刃を押し下げていきます。
ノコ刃を押し下げていくと、ツマミネジがアーム部に突き当たり、それ以上ノコ刃を押し下げる事ができなくなります。
ツマミネジを回してネジの出具合を変える事で、ノコ刃の下限位置を調整出来る仕組みになっています。
ノコ刃の下限調整機能を使用する際に注意する点が、ノコ刃の下限を上げてしまうと、ノコ刃を前方に最後までスライドさせても、切削出来ない部分がでてしまうところです。
フェンスと加工材(仕切り板)の間にスペーサーを挟み込む事で、切削出来ない部分が無い様にします。
実際の仕切り板の木口に、欠き取る溝の深さの墨線を引きます。
ツマミネジを回してノコ刃の下限位置を墨線に合わせます。
仕切り板と同寸の端材を使用し、試し切りをします。
切削深さを確認し、ノコ刃の位置を最終調整します。
同じ方向(長手同士、妻手同士)の仕切り板をまとめて(クランプで固定)スライドマルノコにセットして、切削していきます。
欠き取る溝の両側の墨ぎわを先に切削し、残りも欠き取ります。
欠き取った溝に仕切り板をはめてみて、はまり具合を確認し、調整が必要であれば再切削します。
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以降の工程はマルノコでの加工と同様に、すべての仕切り板に欠き取り加工をし、格子に組んだら相欠き継ぎの完成となります。
スライドマルノコの詳しい使い方に関しては スライドマルノコとは?機能と使い方を ”マキタ・LS1014” で説明します。 の記事を参照してください。
外枠(前後板・側板)の溝加工
前後板・側板に底板をはめ込む溝を加工
ボトルケースの底板は、外枠(前後板・側板)の内側に溝をほり、はめ込んで固定します。
溝ほり加工は、”トリマー” で切削します。
トリマーの詳しい使用法は、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
底板の厚み(5.5mm)ピッタリの溝をほり、底板をはめ込もうとすると、きつく上手くはまらない場合が多いです。
トリマーには6mmのストレートビット・を装着し、底板の厚みより0.5mmほど幅の広い溝をほります。
溝をほる位置は外枠(前後板・側板)の下端から10mmの位置にする為、ストレートガイドを装着しビットとガイドの間を10mmにセットします。
溝は2回に分けて5mmの深さに切削します。
前後板は溝を端から端へ通してほります。
側板は組み立てた時に木口が表に出る為、端まで溝をほってしまうと、溝が表に露出してしまいます。
溝が露出しない様に、側板の端部を残す様に加工します。
端部を残す溝ほり加工に関しては、北欧風ミニチェストをDIY。箱物家具の作り方、お教えします。 記事内の ”背板溝ほり加工” の欄を参照してください。
底板をはめ込む溝(前後板は通し溝・側板は端部を残す溝)ほり加工が完成しました。
前後板・側板に仕切り板をはめ込む溝を加工
格子に組んだ仕切り板の端部は、前後板・側板に溝をほり、はめ込む構造になります。
溝ほり加工は ”トリマー” で行い、前後板に3カ所づつ、側板に4ヶ所づつ、合計14か所ほります。
所定の場所に溝をほる為の墨線を引いておきます。
溝の墨線に合わせて、自作トリマーガイドを両面テープで固定します。
自作トリマーガイドの作り方など、トリマーの詳しい使い方は、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
トリマーにはストレートビットを装着し、自作ガイドにトリマーベースを沿わせて溝切削していきます。
自作トリマーガイドにピッタリと沿った溝がほることが出来ます。
溝の深さは5mmとし、2回に分けて切削します。
溝ほり加工が出来たら、実際に仕切り板をはめてみて、はまり具合を確認します。
14か所すべての溝を同じ様に加工します。
前・後板に取っ手の穴を切り抜き
ボトルケースの前後板に取っ手部分の穴を ”トリマー” で切り抜いていきます。
トリマーの ”ならい加工” で取っ手部分を切り抜いていきます。
ならい加工を行うためには、あらかじめテンプレート(型板)を用意し、トリマーにはテンプレットガイドを取り付け、ストレートビットで切削します。
トリマーでのならい加工のやり方等については、トリマーの使い方と構造について詳しく説明します。 の記事を参照してください。
テンプレートを加工材に両面テープで貼り付け固定します。
トリマーの送り方向は、加工材をビットの左側にしてトリマーを前方へ送っていくのが基本なので、今回の加工におけるトリマーの送り方向は時計回り(右回り)になります。
トリマーの一回の切削は深さ3mm以下にし、何回かに分けて徐々に切削して切り抜きます。
ボトルケース組み立て
底板を前後板・側板の溝にはめ込み、釘と木工用ボンドで箱の枠を組み立てます。
格子に組んだ仕切り板を上からはめ込んで、ボトルケース組み上がりです。
塗装・ステンシル・エイジング加工
組み上がったボトルケースをアンティーク仕上げにする為に、塗装・ステンシルをした後に経年変化(傷・へこみ・汚れ等)を再現するエイジング加工を施します。
塗装とステンシル
ボトルケースのベース色の ”ターナーミルクペイント・ビンテージワイン” を刷毛で塗装します。
”ビンテージワイン” が乾いたら、ステンシルの型をマスキングテープ等で固定し、”ターナーミルクペイント・スノーホワイト” でステンシルしていきます。
ステンシルのやり方については、アンティークな木箱をDIY!ステンシルのやり方教えます。 の記事を参照してください。
エイジング加工
傷やへこみの再現
塗装が完全に乾いたら、傷やへこみを再現していきます。
玄翁・千枚通し・鉄工用やすり・ワイヤーブラシ・サンドペーパーなどを使用し、傷やへこみをつけていきます。
汚れの再現
経年で付いた汚れを塗装する事で再現していきます。
”ターナーミルクペイント・ダストメディウム” を使用し、ほこりをかぶった様な風合いを出していきます。
”ダストメディウム” は少し黄色味がかった乳白色で、粘度が高くドロッとしています。
”ダストメディウム” はウエスなどに少量取、擦り付けるように塗ります。
全体的な汚れには、”ブライワックス・ジャコビーン” を塗布して再現します。
”ブライワックス・ジャコビーン” はウエスに少量取り、すり込んでいくように塗布します。
ブライワックスは蜜蝋を使用したワックスで、塗装に使用したウエス等は放置しておくと、自然発火する恐れがあります。
使用後の塗装用具は必ず水に浸して処理してください。
完成
アンティーク風ボトルケースの完成です。
まとめ
今回は、”相欠き継ぎ” を使った ”アンティーク風ボトルケース” の作り方を紹介しました。
”相欠き継ぎ” は木工DIYにおいて様々な所で使われる基本の接合方法です。
マルノコ・スライドマルノコを使用した2種類の方法を説明しましたが、難易度は高くないのでぜひ習得したい接合方法です。
参考にしてみてくださいね。